2020年4月14日号

[特集]
家族と折り合えない時は
〈縁を切る、距離を置く、あきらめる〉

血がつながっているのに、同じ家で暮らしてきたのに、どうにも気の合わない親やきょうだい、わが子はいますか。「家族だからわかり合える」「家族は仲良くするもの」……そんな世間の価値観に背を向けて、「合わない人とはつき合わない」という選択肢を考えてみました

●注目記事●

〈「お前が男だったら」と嘆いた父よ〉
運命も人も 変えられないなら、
岩井半四郎の名を私が継ぐと決めた

岩井友見

2020年5月に、十一代目岩井半四郎を襲名することになった岩井友見さん。歌舞伎の大名跡を女性が継ぐのは異例のことですが、その決意の裏には家族とのさまざまな葛藤があったといいます

去る1月14日、私は岩井本家として預かっておりました「岩井半四郎」の名跡を、十一代目として継承すると発表いたしました。十代目だった父が亡くなっておよそ10年。どなたかに継いでいただくか、もしくは勝手ながら父の代で「留名」とするか、ずっと悩んできました。

けれど、368年続いた名前を私が止めてしまうのはおこがましいのではないか。女性ですから歌舞伎俳優としての部分は継ぐことはできませんが、ならば日本舞踊家として襲名させていただこう、と考えました。それは歌舞伎の家の長女に生まれ、3歳で初舞台を踏み、正派岩井流の宗家家元として39年、芸に精進してきた私の運命なのだといまは受け止めています。

正派岩井流というのは、歌舞伎の長い歴史のなかで育まれた日本舞踊の流派です。父方の祖父・花柳寿太郎は私が幼い頃から踊れば喜んでくれましたし、私も大好きな祖父に喜んでもらえることが、ただただ嬉しかった。

お稽古が本格化する年齢になると、学校のあとに稽古場へ行き、毎晩10時に帰宅するような日々。踊りの師匠でもあった父はとても厳しく、棒で脚をピシャッと叩かれることもたびたびありました。子どもの私にとって、面と向かって話すことができないほど怖い存在でしたね。母は、そんな私を静かに見守ってくれていました。

とはいえ、自分が将来、日本舞踊家になるとか、女優になるとか、そんなことはまったく考えていませんでした。むしろ家系には医者が多かったものですから、自分も当然医学の道に進むものだ、と思っていたくらい。勉強もきちんとしていたんですよ。(笑)

中学に進むタイミングで、私の人生に大きな「変化」が起こります。姓が仁科から岩井へと変わったのです。しかも、家族のなかで私だけ。

少し複雑な事情なのでご説明しますと、父(本名・仁科周芳)は日本舞踊家の長男として生まれたものの、幼少期に歌舞伎界の門人となり、1951年に十代目岩井半四郎を襲名します。すでに故人となっていた先代と血縁はないわけですが、襲名の際、先代の妻から「夫がいないいま、私が再婚して姓が変わると、岩井家が絶えてしまう。あなたの子どもの一人に岩井姓を継いでもらえませんか」と頼まれたのだとか。

その約束を守った父が、私を岩井家の養女にしたのがこのときです。もちろん戸籍上だけのことですし、暮らしは何一つ変わりません。でも、ある日を境に突然、違う姓で呼ばれるのは不思議な感覚でした。

それに、家族のなかでたった一人違う姓というのは、12歳の女の子からすれば、わだかまりのようなものが残ります。4人きょうだいの私には妹が2人、弟が1人いますが、長女ならではの責任感や、何かを背負う、といった覚悟のようなものは、このときから確かに感じはじめていたと思います。
(一部抜粋)


他にも、信田さよ子さん、大塚玲子さん、さかもと未明さんの座談会「〈苦しいのに、なぜ期待を抱いてしまうのか〉「仲良くして当たり前」という幻想は捨てていい」、ガンダム芸人として知られる若井おさむさんの衝撃告白「母に手をかけずにすんだのは 僕が僕の人生を失いたくなかったから」、上西充子さんの解説「家庭内の「呪いの言葉」には毅然と立ち向かって前に進もう」などが掲載されています。

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[第二特集]
〈元気なお腹で、人生も変わる〉
はじめよう! 腸活

長寿の要となる「腸」は、いま最も注目される臓器。私たちの体を構成する60兆個もの細胞がいきいきと働くためにも、日常的なケアで若々しさを維持したいものです。春の訪れとともに、体の内側から健康を目指しましょう

●注目記事●

〈大腸がんの経験から、食生活を改善して〉
1日1個の「おからマフィン」で健やかな毎日を手に入れる
重野佐和子

お腹の不調が原因で、大好きな甘いお菓子を我慢するのは悲しすぎる──。そんな思いから、おいしくて腸に優しいスイーツを開発した重野佐和子さんにお話を聞きました

おかゆ一口で胃腸が動き出した

大好きなスイーツを口に運ぶと、思わず顔がほころんで幸せな気持ちになりますよね。疲れやストレスもたちまち吹き飛ぶ。でも、食べたくても我慢せざるをえない人もいます。病気のため食事を制限している人、発病や再発を恐れている人、お腹が弱い人……。それがどんなにつらいことか、私も大腸がんになって知りました。そういう人たちに、そして健康な人にも、とびきりおいしくて体に優しいスイーツをお届けしたい! そう思って、私は「おからマフィン」を開発したのです。

私の直腸にがんが見つかったのは、38歳の時。「おいしいものを食べすぎたからだ」と直感的に思いました。フランス料理とスイーツを専門とする料理研究家として、土日も関係なく夜遅くまでキッチンで働き、肉やバター、生クリームなどこってりしたものを日々口にしていたのです。しかも、仕事を終えた深夜に食べることもしょっちゅう。当時から食事と体に関する知識は多少ありましたので、自分の胃腸に負担がかかっているのはわかりました。それに、よく下痢をしましたし、寝ても疲労感が抜けないという自覚があった。若かったから気合で乗り切っていたけれど、私の腸は悲鳴をあげていたのです。最終的には下血してしまい、病院で検査を受けたところがんが発覚。自分の体へのいたわりが足りなかったと、反省しきりでした。

ただ、手術に関しては、悪いものを取り去るのだからきっと以前より体がラクになる、と前向きに捉えていましたね。当時は開腹手術が一般的だったので、術後しばらくは点滴で栄養を補給するのですが、その後、何日ぶりかの食事で口にしたおかゆのおいしさは忘れられません。お腹がぎゅるぎゅると音を立てて動き始め、体の中から元気が出てきたのです。食べ物の持つ力を体で感じ、感動を覚えました。
(一部抜粋)


他にも、専門家が教える 「ストレッチともみほぐしで、 腸内環境を上向きに」、「体質に合う食品を見つける「低FODMAP食事法」」が掲載されています! 

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[読みもの]

〝家族のようなもの〟のために僕がいま、できること
山田孝之

ドラマ『全裸監督』でAV監督役を演じ、大注目を浴びたと思いきや、初めてのシングルファザー役に挑戦するなど、幅広く活躍中の山田孝之さん。俳優だけでなく、プロデューサー、社長業と活動の幅を広げる、その真意とは

15歳のときに鹿児島から上京し、16でこの世界に入って20年になります。幅広い役柄をやらせてもらい、さまざまな経験を積むことができました。いまの僕は俳優の仕事を十分に楽しめているし、やりたいと思ったことは、何でもどんどんチャレンジできる環境にいる。本当にありがたいことだと思います。

でも振り返ってみると、20代まではどこか気持ちが閉じていて、壁を作って周りを寄せつけないところがあった。もちろん楽しい出来事はいっぱいあったし、いい作品にも出合えたんですよ。でも、総じて考えると、20代は我慢のときだったのかな。

それが、30代になったらとにかく楽しくなってきました。メジャーな作品からマニアックな作品まで、映画、ドラマ問わず出演することができたし、プロデューサーとしても作品にかかわれた。さらに俳優を目指す人のための新しいメディア「ミラーライアー」の立ち上げに参画し、スターとファンとをつなぐライブコマース(ライブ動画を見ながら商品を購入できる通販)事業を行う会社「ミーアンドスターズ」も設立しました。

新しく始めたこれらの活動はすべて俳優業につながっていて、同業者やこれから俳優を志す人たちが仕事をしやすくなることを目指しています。俳優である僕だからこそできることがあるはず。そう思って、とにかくいまは必死で取り組んでいます。

そんなとき、飯塚健監督からやってみないかと誘われたのが、映画『ステップ』の健一役でした。30歳の若さで妻に突然先立たれ、1歳半の娘とともに生きていくという役柄です。妻を失い、娘を育てるという経験はしたことがない。でも脚本を読んで、僕にとってこの役を演じることが必要に思えたのでオファーをお受けしました。
(一部抜粋)

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〈婦人公論井戸端会議2020〉
司会=重松清 ゲスト=芦田愛菜/伊藤氏貴
最近、ステキな本に出会っていますか?

高校国語の教科書から文学作品が減りつつあります。若い人が本を読まなくなったと言われる今、国語教育のこれからを懸念する声も。そこで今回は、明治大学准教授・文芸評論家の伊藤氏貴さんと、大の本好きで、この春、高校1年生になる芦田愛菜さんをゲストに、本を読む楽しさ、文学にふれることの意義を語りあいました

本が本を呼び世界を広げる

重松 愛菜さんは、年間100冊以上も本を読んでいるとか。

芦田 私にとって本を読むのは、お風呂に入るとか歯を磨くのと同じ、生活の一部になっています。

重松 ご著書『まなの本棚』には、日本の現代作家の小説はもちろん、平安時代や江戸時代のもの、外国文学も紹介されています。読むジャンルはさまざまですね。

芦田 海外ミステリーにハマっているときもあるし、古典や明治の文豪の作品を読みたいなと思うときもあります。とにかく、いろいろな本を読んでみたいんです。

重松 本と出会ったきっかけは?

芦田 小さいときから、父も母も絵本の読み聞かせをしてくれましたし、私のために図書館で本を借りてきたり、常に身のまわりに本がある環境をつくってくれていました。子どもの私にとって本はワクワクさせてくれるもので、「何かほしいものは?」と聞かれると、いつも「本がほしい!」と。

重松 今の時代、マンションのモデルルームにも、本棚のない部屋は多いんですよ。

伊藤 学生も、ますます本を読まなくなっていますね。私が学生の頃はまだ、読んでいないことに対する羞恥心がありましたが。

重松 そうそう。友だち同士、ある本の話をしているときに自分が入っていけないとつらくて、うちに帰ってあわてて読むという。僕と伊藤さんは50代ですが、昭和の小学生って、身近なところに本がたくさんありましたね。親の本棚からこっそり本を抜き取って読んだり。背伸びしてね。

伊藤 私も、読書に目覚めたのは親の本棚にあった本からでした。小学生のときに北杜夫の「どくとるマンボウ」シリーズにハマり、そこに出てきた中学校に憧れて、その中学を受験したほどです。
(一部抜粋)

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他にも、

〈28年も同じ役を演じられる幸せ〉
市村正親
アスレチック女子の妻には 負けられない

〈移ろいゆく記憶の向こうに見えたもの〉
原田美枝子
母を女優にしてあげたくて、 私はカメラを回すことにした

〈人生を変えたジャニーさんからの電話〉
京本大我(SixTONES)
あの快感をもっと味わいたくて

〈レジ袋、ペットボトル、洗顔料…… あなたも出しているごみが原因に〉  
マイクロプラスチックの見えない脅威
古川美穂

〈ルポ 精神疾患や依存症……〉
生きづらさを抱えた親の子育てを、 どうサポートできるのか
玉居子泰子

などなど、盛りだくさん。ぜひご一読ください!!

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