親になる恐怖心から妻とも別れて
小学生のときから「絶対に結婚はしない」と思っていた僕の結婚生活についても、お話ししなくては。結婚したのは2008年のことです。不安はもちろんありました。虐待を受けた人は、今度は自分が虐待をしてしまうと言いますよね。その不安は的中した。
結婚した最初の1年間くらいは──あ、もちろん、手はあげませんよ、手こそあげないけれども──妻を追い詰めてしまった。掃除の仕方、料理、洗濯、細かいことをいちいちとがめて。
そのことを指摘された僕は反省して、今度は彼女を娘のようにかわいがりました。洗濯でも料理でも全部僕がやって、すごく仲良くやってきたのですが、あるとき「子どもがほしい」と言われた。でも「それは無理や」と思った。ひとつには僕らはもう、親子のような関係だったこと。そしてもうひとつは、僕が父親になるのが怖かったこと……。
彼女は僕の生い立ちについてもよく理解してくれていたので、話し合いの末円満に離婚しました。彼女は再婚し、今は幸せにやっているようです。
これから先、家族を持ちたくないわけではありません。今つきあっている彼女もいるし、向こうもおそらく結婚したいんやろうなあと思う。でも、やはり父親になるのは正直怖い。この問題については、この先もまだ抱えていくことになるのでしょう。どうなるのか自分でもよくわかりません。
今は芸人としての仕事は少なくて(笑)、不定期でキックボクシングのトレーナーのバイトをやっているんです。ストレス発散になるのでいいバイトだと思いますよ。それから出版社の方からお話をいただいて、マンガを描いているんです。今お話ししたような僕の子どものころの話を、ポップに描けたらいいなあと思います。
今、幸せですか? とたずねられたら、やっぱり幸せなんだろうな。これは、家族と縁を切ったからこその幸せやし、自分の人生に希望を持ち続けたからこその幸せでもあると思います。
今、家族の問題でつらい気持ちでいる方はたくさんいらっしゃると思いますが、自分自身を大切にしてください。この闇から抜けたらきっと光があると、自分の人生に希望を持っていれば、いずれはきっとなんとかなります。