イメージ(写真提供:写真AC)
認知症になってからも、すべての人が施設に入居するわけではない。自宅でひとり暮らしを続けている人は、どんな状態で、どう生活をしているのか──。当事者とサポートをする人たちの声を聞いた。98歳の池本さん(仮名)は、すでに息子も後期高齢者、介護の中心は孫世代になっているそうです(取材・文=樋田敦子)

2よりつづく

介護の中心が孫の世代に移って

「認知症になってもひとりで暮らせますかと問われても、『この人のこのケースならば、今はやっていけます。でも3ヵ月先はどうなっているかはわかりません』、としか答えられないですね」

そう話すのは、埼玉県新座市にある認定NPO法人「暮らしネット・えん」代表理事の小島美里さんだ。ボランティアから始めて25年にわたり、地域に根差した介護事業を手掛けてきた。現在はグループホームから訪問介護、配食まで7つのサービスを提供している。

週に3回、「えん」の多機能ホームを利用している池本千鶴子さん(98歳、仮名)は要介護3だ。所有する一軒家で、ひとり暮らしを続けている。定期的に内科医に往診してもらい、処方された高血圧と胃の薬を飲んでいるが、年齢からすれば健康だ。

普段はテレビを見て過ごすことが多い。足腰は弱っているが歩くことはでき、ときどき尿漏れはあるものの、トイレにも自力で行く。入浴はホームですませ、通所していないときの昼食は、配食サービスを利用する。それ以外には朝夕2回、ヘルパーが居宅を訪ね、食事をセッティングしている。

千鶴子さんの息子は2人ともすでに後期高齢者。それぞれ体調が悪かったり、家庭の事情があったりして同居はしていない。今、介護サービスの判断をしているのは孫たちだ。週末に手作り料理の差し入れをするなど、自分たちでできることはして、事業所に任せるところは任せる、という線引きをしている。千鶴子さんは「ここでこのまま過ごすのだろうね」と、心を決めている様子だ。