みんながほっとした時からが私たちの出番
コロナ禍の影響で、もともとは今秋公開される予定だった映画『老後の資金がありません!』の公開が来年に延期されました。舅の葬儀や夫のリストラなどさまざまなことが降りかかり、老後の資金として貯めていた貯金を切り崩していくサラリーマン家庭の物語で、私は主人公の主婦役を演じています。
とても楽しくて素敵な映画なので、もちろんすぐにでも見ていただきたいけれど、皆さんが心から楽しめる時期まで待とうというのは英断です。きっと一番いい時期に公開できると信じています。
この夏は、大雨による災害もありました。私たち役者は、世の中が大変な時に即戦力にはなれません。ですから、時に無力感を抱いたりもします。役者の先輩たちとそういうお話をした時、「社会が落ち着いて、みんなちょっとほっとした時からが僕たちの出番だから。その時のために体力と精神力を蓄えるのも、役者として大事な心構えだよ」と言われて。なるほど、その通りだと思いました。
わざわざ映画館や舞台に足を運んでくださる方に、「面白かった」「じ~んと心に沁みた」「腹の底から笑えた」など、何かしら持って帰っていただければ、役者としてなによりうれしい。そのためには一つ一つの仕事に真摯に向き合い、キャストとスタッフみんなで力を合わせて作品の完成度を高めるしかない。この間、あらためて自分にそう言い聞かせました。
今後は映画やドラマの撮影方法や舞台の作り方なども、変わらざるをえないでしょう。やはり柔軟に変化していかなければ、エンターテインメントの世界そのものが生き残っていくことができない。コロナ以前とコロナ以後の間に、線を1本引くような──その感覚は、きっと皆さんも同じように抱いていらっしゃるのではないでしょうか。
ここから新しい考え方や行動のあり方を取り入れていかなくてはいけないし、変わるタイミングなのかな、と思っています。