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親の長生きを願い、老後の暮らしを支える人は多い。一方で、幼い頃から親の暴言や自己中心的な態度に傷つけられてきた娘たちは、複雑な心境だ。自立したり結婚したりして、嫌いな母親と距離をとっていたのに、介護が必要になった母にかかわらざるをえないケースもある。トラウマを引きずる人、やむをえず世話をする人などそれぞれの思いを追った(取材・文:石川結貴)

父は浮気三昧、母は自己チュー(麻衣子さんの場合)

「母と離れられてスッキリしました」、東京都に住む麻衣子さん(59歳)は明るく言った。要介護2の母(82歳)を10年近く在宅介護したが、昨夏に山梨県の高齢者施設に入所させたのだ。

「ウチは両親そろって《毒親》です。良家出身の父は道楽者で浮気三昧、借金を重ねて資産を食いつぶした。母もお嬢様育ちで見栄っ張り、超がつく自己チューです。私はひとり娘なのに、子どものときはまともに服も買ってもらえなかった。でも母は、デパートで自分用のブランド服を買いあさるんです」

見かねた親戚が「お下がり」をくれた。何かにつけて周囲の助けを受けるたび、「おまえの親は常識がない」と両親の悪口も聞かされる。

「父も母もまともじゃないんだと気づけたことはよかったし、早くから自立心が芽生えました。建設業の夫と結婚するときは大反対されたけど、むしろこれで縁が切れたらいいなと思ったくらいです」