
MARUU=イラスト
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。ゴルフのスコア計算に手間取っていたら「アガワさんって、案外、算数苦手なんですね」と笑われてしまったんだそうで――。
※本記事は『婦人公論』2023年9月号に掲載されたものです
※本記事は『婦人公論』2023年9月号に掲載されたものです
ゴルフのスコアカードを睨みつけ、私は足し算と格闘する。ハーフラウンドした結果、はたして成績はどうであっただろう。
たとえば1ホール目から9ホール目までのスコアが、
5、7、4、6、6、8、3、6、8
だったとする。私はまず、足して10になる数を探す。すなわち3ホール目の4と、4ホール目の6を足せば10だ。あと、2ホール目と7ホール目を足して10。これで20。残るは……? と目を凝らし、どこを残していたか、わからなくなる。
1ホール目の5と、ええとええと、5ホール目はもう計算に入れたんだっけ? わけがわからなくなって、また振り出しに戻り、ええい、ままよ。頭から順に足していこう。つまり5足す7で12でしょ。そこに4と6を足して22。22に6を足して28、28に8を足して……。
なんでこんなに時間がかかるのだ。と我ながらイライラしている横で、隣にいたゴルフ仲間に、「アガワさんって、案外、算数苦手なんですね」と笑われた。
そうなんです。寄る年波に勝てず計算ができなくなって。そう答えながら、はたしてこれは寄る年波のせいかどうかを考える。