やはり、子供時代や若い頃のほうが計算は早かったような気がする。とはいえ、私よりはるかに暗算を得意とする人がいて、「どうしてそんなにパッパと計算できるの?」と聞くと、たいがい、

「そろばん教室に通っていたおかげかな」

そう答える人が多かった。

そうか、私はそろばん教室に通わなかったから遅いのかもしれない。彼らは頭の中にそろばんの盤が浮かび、頭の中で珠(たま)を上げ下げするらしい。私はそんな技を使ったことはかつて一度もない。

それでも計算や暗算は日常的に逃れられないタスクであった。

ゴルフを始めるはるか昔より、外へ出かけて買い物をすれば必ず金額やおつりを計算しなければならない。夏休みのドリルを一日何ページこなせば何日間で仕上げることができるかを算出しておかねばならない。もっともこの手の計算は、日々刻々と予定が変更され、なぜか夏休み明け直前には、「そんな要領では間に合わない」と思うほど、残りページの多さに愕然とするばかりであった。

小学校低学年にして、遠足の日には一人お菓子を五十円まで買ってきてよろしいという許可がおり、生徒はこぞって商店街へ繰り出し、何と何を買うと五十円以内で収まるかを必死で計算したものだ。