《平螺鈿背八角鏡》唐時代・8世紀正倉院宝物 後期展示:11月6〜24日

 

聖武天皇御遺愛の品々から東西交流の軌跡を辿る

来る10月22日、「即位礼正殿の儀」が行われ、いよいよ本格的な令和の御代が始動する。本展はこの慶事を記念して、正倉院宝物を中心に飛鳥・奈良時代の貴重な文化遺産を紹介する展覧会だ。

東大寺大仏殿の北西に建つ正倉院は、約9000点もの皇室の至宝をおさめた、校倉(あぜくら)造りの宝庫。奈良時代に建てられたこの倉は、1260年の長きにわたり、戦禍や災害などの危機的な状況に直面することもあったが、貴重な文化財を守ってきた。その中から選りすぐりの宝物が並ぶ本展で特に注目したいのは、正倉院宝物の由来となった、聖武(しょうむ)天皇と光明(こうみょう)皇后ゆかりの品だ。

天平勝宝8歳(756年)6月、光明皇后は崩御された聖武天皇の冥福を祈って、600点以上に及ぶ天皇御遺愛の品々を、東大寺の大仏に献納された。

これらは『国家珍宝帳』という目録に記されている。その中のひとつが、背面が琥珀や螺鈿、トルコ石などで装飾された《平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいのはっかくきょう)》だ。きらめく螺鈿は、南海に生息するヤコウガイの真珠層を素材とする。約1260年という時空を超えて輝き続ける宝飾鏡は、豪華というより可憐な印象だが、いかがだろう?また《螺鈿紫檀五絃琵琶(でんしんのごげんびらたわ)》も『国家珍宝帳』記載の品。世界で唯一現存する、古代インドに起源を持つ五絃の琵琶で、インドからシルクロードを通じて伝えられたと考えられる。奈良時代の東西交流の歴史を知るうえでも大変貴重な作品だ。

《螺鈿紫檀五絃琵琶》唐時代・8世紀正倉院 宝物前期展示:10月14日〜11月4日

本展ではこれら正倉院宝物を、東京国立博物館が所管する法隆寺献納宝物とともに紹介。「国のかたち」ができた頃より守り伝えられてきた悠久の美を前に、あらためて身が引き締まることだろう。会期中展示替えあり。

 

 

国宝級の自筆譜が!

「ノクターン第2番」や「雨だれ」(「24の前奏曲集第15番」)など、数多くのピアノの名曲を世に送り出したことから「ピアノの詩人」と呼ばれるフリデリク・ショパン(1810-49)。彼の故郷ポーランドとの国交樹立100周年を記念して開催される本展では、日本人にも馴染み深いショパンの音楽や生涯を、多彩な美術品や資料を通じて紹介する。

日本初公開となる、世界で最も有名なショパンの肖像画などの造形作品が紹介されるが、真の「音楽好き」「ショパン好き」が熱望してやまないものは、やはりショパン自筆の楽譜だろう。

今回特別出品される楽譜「エチュードヘ長調作品10の8」は、現存するこの曲唯一の自筆譜だ。出版された楽譜よりもテンポ指示が速く、左手伴奏を2度変更するなど、構想時の曲調やショパンの試行錯誤がよくわかる。ポーランドでは国宝級の資料である。

《「エチュードヘ長調作品10の8」自筆譜(製版用)》フリデリク・ショパン、1833年以前、インク、紙 Photo:The Fryderyk Chopin Institute
 

 

 

草間彌生、エリック・カール……巨匠たちが名作の世界に

1865年に初版が刊行されて以来、150年以上にわたって世界中で愛されてきた『不思議の国のアリス』。英国オックスフォード大学クライスト・チャーチの数学講師だったルイス・キャロルが、10歳の少女アリス・リデルのために作った物語は、後に画家のジョン・テニエルの挿絵をつけて出版された。本展では、このアリス誕生の物語に加え、草間彌生やエリック・カールなど、物語の独特な世界観に没入できる国内外のアーティストたちの作品を約200点展示。「アートの国のアリス」をご堪能あれ。

ルイス・キャロル《切手ケース》1890年紙 Lewis Carroll,The Wonderland postage stamp case.The Rosenbach,Philadelphia