ディエゴ・ベラスケス《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》1659年、油彩/カンヴァス、ウィーン美術史美術館

 

ヨーロッパ王室の軌跡とともに

13世紀末にオーストリアに進出して以来、約600年にわたって、ヨーロッパに君臨し続けたハプスブルク家。本展はウィーン美術史美術館が収蔵する一族のコレクションを、時代ごとに収集の特色と併せて紹介する展覧会だ。

《ルイ16世とマリー・アントワネットの子供たち、ルイ・シャルルとマリー・テレーズ》フランス、19世紀初頭、ダイヤモンド・ルビー・真珠・エナメル・金、国立西洋美術館、橋本コレクション

15~16世紀にかけて活躍した神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世から、オーストリア・ハンガリー二重帝国「最後の皇帝」フランツ・ヨーゼフ1世ゆかりの品まで、数々の絵画や美術工芸品が紹介されるなか、やはり観ておきたい作品は《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》。当時8歳の王女を描いた本作は、スペイン・ハプスブルク家のフェリペ4世に仕えたベラスケス晩年の傑作で、将来彼女が嫁ぐオーストリア・ハプスブルク家に贈られた。残念ながらマルガリータ王女は、結婚後21歳という若さで亡くなってしまったが、彼女は今もベラスケスが描いた肖像画の中で、抜群の存在感を放っている。

マルガリータ王女のほかには、フランス革命で断頭台の露と消えたマリー・アントワネットや、美貌の皇妃エリザベトなどの肖像画も多数。指輪に描かれたマリー・アントワネットの2人の子供を見ていると、とくに家族から引き離され、劣悪な環境に幽閉されて10歳で命を落としたルイ・シャルルの悲劇的な運命に思いを馳せずにはいられない。


 

 

 

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「失われた明治」を描き続けて

歴史に残る近代日本画の名作であるにもかかわらず、1975(昭和50)年の展覧会に出品されて以来、所在不明となっていた鏑木清方(かぶらききよかた)(1878-1972)の《築地明石町(つきじあかしちょう)》。今年6月、この幻の名作を新収蔵した東京国立近代美術館では、本作に《新富町(しんとみちょう)》《浜町河岸(はまちょうがし)》を合わせた三部作を、現在公開中である。

1878(明治11)年に東京・神田に生まれて浮世絵を学んだ鏑木清方は、失われた明治の情景を描き続けた日本画家。外国人居留地だった明石町でふと振り向いた女性を写した《築地明石町》は、「明治の人々の生活を描く」ことに決めた清方の、画業後半のスタートラインに位置する作品だった。と同時に、発表するや否や絶賛された出世作でもある。明治時代に流行した「イギリス巻」に髪を結った女性の、凜とした黒い羽織姿が印象的。清方の画集ではたびたび掲載されながらも、一般に公開されるのは実に44年ぶりという作品である。

 
鏑木清方《築地明石町》1927(昭和2)年、絹本彩色・軸装173.5×74.0㎝ 東京国立近代美術館 ©Nemoto Akio

 

 

 

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現実世界を問い直す現代芸術

ギャラリーの空間を、まるまるホテルに造り替えたり、美術館の展示空間に大きな波がゆらめく海景を出現させたり、空間を大規模に変容させる表現で、観る者を驚かせてきた日本の若手現代アートチーム「目」。国内外で注目を集める彼らの、美術館での初の大規模個展である。

直径170㎝にも及ぶ凸面に裏から彩色をほどこした惑星のような《アクリルガス》は、宇宙の神秘を感じさせる作品だ。そして千葉県の地球磁場逆転地層(チバニアン)をヒントに大規模なインスタレーションを展開する本展は、地球という惑星や美術館の空間をとらえ直し、新たな感覚で観る機会となりそうだ。

《アクリルガス》制作:2018年