「三四郎はムリするなよ。腰やってるんだろ」

「いや、急に動いたりするんじゃなきゃ大丈夫。ゆっくりなら、重いものは持てますよ」

 タンスを運んで、冷蔵庫と洗濯機を運んで、茶箪笥(ちゃだんす)も運んで。後は、私や由希美ちゃんや志織さんでも運べるようなものばかり。でも、一人じゃ危ないものは二人で運んで。尾道さんの指示でまるでパズルをはめ込むようにパネルトラックの中にどんどん運んでいって。

 荷物を全部積み込んだら、今度は部屋の掃除。男の人たちは一休みしてもらって、私と由希美ちゃんと志織さんで掃除していく。

 向こうの新しいアパートの部屋では、さよりちゃんとなみえちゃんが部屋を掃除して待っている。

 私と同じアパート。部屋も、隣同士。

 本当に偶然なんだけど、空いていたんだ。三ヶ月ぐらい前に住んでいた若い夫婦が引っ越していた。それで、夏夫くんたちが引っ越すってなったときに言ってみた。うちの隣が空いてるよ! って。

 さよりちゃんにも訊いたんだ。志織さんたちが引っ越すんだけど、隣空いてるよって言ってみる? って。そうしたら、ぜひって。黒川さんのことはあったけれども、それはさよりちゃんと志織さんの仲にはなんの関係もないことだし。

 私を通じて繋がったんだし元々縁があった間柄だから、志織さんがよければ、この先隣人としてずっと仲良くやっていきたいって。

 それで不動産屋さんに訊いて、夏夫くんと志織さんにも言った。志織さんも、また新しい場所で暮らし始めるのに、隣りに古い知り合いのさよりちゃんがいるっていうのはとても心強い、嬉しいって言ってくれたんだ。

 場所もちょうどよくて、家賃も今まで住んでいたところとそんなに変わらない。もちろん高校にも近い。夏夫くんは通学には楽になる。〈カラオケdondon〉にはちょっと遠くなるけど。