トラックは尾道さんが運転して、夏夫くんと悟くんが一緒に乗って。そして志織さんの車に、志織さんと私と由希美ちゃんと三四郎くん。アパートの場所は私が知ってるから、近くなったら道案内するので、私が助手席に乗った。

「どういうふうに言えばいいのかわからないのだけど」

 志織さんが、ハンドルを握りながら言った。

「皆さんに、本当に、心の底からお礼を言いたいの。言葉だけで済ませてしまうのは、心苦しいんだけど」

「そんな」

「何でもないです。僕たちが手伝いたくてやってるんで」

「そうです」

 誰も言わなくても、最初から決まっていたみたいに皆がそう思っていたんだ。引っ越しを皆で手伝おうって。夏夫くんは、日曜日のバイト代も飛んじゃうし引っ越し屋さんに頼めば済むんだからって言ったけど、いくら保険金が入ったからって節約しなきゃならないんだから。

 志織さんが、微笑(ほほえ)んだ。

「今日のことだけじゃないわ。坂城くんの家にお世話になったり、三四郎くんがあの人に頼んでくれなかったら、今もどうしていいかわからなかった。とにかく、皆がいなかったらこんなふうに新しい暮らしに進んだりはできなかったと思うの」

 本当に、本当にどうお礼をしたらいいのかって。

「何でもないことですから」

 三四郎くんが言う。

「ただ、友達のためにできることをしようって思っただけです。それは、仲の良い友達同士だったらあたりまえのことだと思います」

「そうです」

 友達が苦しんでいたら助けてあげたい。できることがあるんならしてあげたい。本当に、それはあたりまえのことだ。

 三四郎くんが、うん、って頷いた。