《ballade》2007-08→AW photo: Yoshiharu Koizumi
 

人気デザインブランドのアイデアの源泉を体感

ぬくもりのあるデザインと、優しい風合いの服で高い支持を集めるブランド、ミナペルホネン。2020年は、デザイナーの皆川明(1967-)が同ブランドの前身「ミナ」を立ち上げてから25年の節目の年となるという。本展は、都内の美術館では初、過去最大規模の展覧会である。

「せめて100年つづくブランドに」。そんな気持ちをこめて皆川がスタートしたミナペルホネンの洋服は、日本各地の生地産地との関係性を大切にし、オリジナルの生地からつくられる。コンセプトは「特別な日常服」で、雪どけの中に咲く小花のデザインが春の訪れを感じさせる“ballade”のシリーズのように、物語性をたたえているのも特徴だ。

《one day》原画 2018-19→AW photo: sono(bean)

こうした服づくりのアイデアがいかに生まれ、どのようにアトリエや工場を経て、人々の元に届くのか? 本展では、人とモノが連鎖しながらさまざまにつづいていくモノづくりのプロセスを、「実」「風」「土」といった8つの空間で紹介する。

なかでも圧巻なのは、約400着の服が天井近くまで数段にわたって展示された「森」のセクション。ミナペルホネンの歴史と哲学を体感することができる空間だ。また「芽」の部屋では、少女が広大な森を巡る景色を描いた“one day”の原画など、生地の図案やアイデアなどを展示。会場にあふれる創作のエネルギーに圧倒されることだろう。

 

 

 

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はかない命を木版画で表して

詩情あふれる木版画で知られる清宮質文(せいみや・なおぶみ)(1917-91)。彼の展覧会は、関東圏では定期的に開催されている印象だが、関西で本格的に画業の全貌を紹介するのは今回が初めてという、記念すべき回顧展である。

版画家・清宮彬(ひとし)の長男として東京に生まれ、東京美術学校を卒業した後、美術教師や商業デザイナーなど、サラリーマン生活を送っていた質文。36歳の時に芸術に専念することを決めた彼は、密やかにはばたく蝶や、炎のゆらめくろうそくなど、はかない命を慈しむような温かく静謐な作品を数多く生んだ。たとえば1匹の蝶が飛んでいるようにも、2匹の熱帯魚がキスをしているようにも見える《蝶》は、濃紺の闇にレモン色の羽がキラキラとまたたく作品。抽象と具象の間をたゆたうような非現実感も心地よい。油性インクではなく水彩絵具を重ねることによってつくりあげられる、透明感あふれる彼の木版画に心癒やされる人は多いだろう。

本展では清宮の版画作品のほか、彼が魅了されていたガラス絵の制作にも焦点をあて、その静かなる芸術世界に迫る。

 
《蝶》1963年木版画茨城県近代美術館照沼コレクション後期展示:2020年1月28日〜3月8日

 

 

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ミュシャを魅了したミューズの実像に迫る

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、パリをはじめ欧米各国で活躍したフランスの女優サラ・ベルナール(1844-1923)。彼女の公演のポスターをミュシャが描いたり、ルネ・ラリックが舞台用の装身具を手掛けたりと、美術の世界ではアール・ヌーヴォーのミューズとしても知られている。本展は、芸術家のパトロンで興行主でもあった彼女の実態を知る展覧会だ。人生はもちろん、彼女が生きた「ベル・エポック」という時代を、写真や肖像画など貴重な史料で紹介する。

W.&D.ダウニー《『テオドラ』でのサラ・ベルナール》1884年 ダニエル・ラドゥイユ・コレクション