イメージ(写真提供:写真AC)
今年も街中がクリスマスカラー一色になる時期が到来。「キリスト教徒でもないのに、クリスマスを祝うなんていい加減だ」と言われ続けていた日本人だが、宗教学者の島田裕巳さんによると、それは違うという。この機会にクリスマスの真実を見てみよう。

※本稿は、島田裕巳著『神社で拍手を打つな! 日本の「しきたり」のウソ・ホント』(中公新書ラクレ)の一部を、再編集したものです。

イエス・キリストの誕生日は12月25日ではない

よく日本人は、キリスト教徒でもないのに、クリスマスを祝うと言われ、それが日本人が信仰にかんしていい加減な証として取り上げられることが多い。

だが、クリスマスの行事が、キリスト教とも、キリスト教の教会とも関係のないものであるとするなら、そもそも、「キリスト教徒でもないのに、クリスマスを祝う」という批判が成り立つのかどうか、実は問題はそこなのである。

キリスト教会では、彼らが信仰の対象とするイエス・キリストは、クリスマスの12月25日に生まれたとし、その日には、ミサを挙げている。キリスト教の信仰を持たない人間でも、そうした機会に接したことがあるだろう。

だが、イエス・キリストの行ったことと、言ったことを記した新約聖書の「福音書」のどこを見ても、イエスが12月25日に生まれたとは書かれていない。12月に生まれたともされていないし、季節さえ特定されていない。イエスの誕生した日については何も書かれてはいないのだ。

これは、ユダヤ教の聖典でもある旧約聖書とも共通することだが、新約聖書においては、歴史的な年代ということに関心がむけられていない。そこに記された出来事が、いったいいつ起こったことなのか、それが書かれていないのだ。これは、歴史書ではなく、神話の記述のスタイルである。

西暦の紀元は、イエス・キリストが生まれた年を最初の年、元年としているはずだった。ところが、イエスについての研究が進むにつれて、それに疑問が寄せられるようになる。「マタイによる福音書」には、イエスはヘロデ王の時代に生まれたとされている。ヘロデ王が亡くなるのは紀元前4年である。また、ヘロデ王が2歳以下の子どもを殺すことを命じ、イエスの父ヨセフが、夢のなかでそれを知り、逃げたという話も出てくるので、イエスの誕生は、紀元前6年から4年のあいだと推定されている。