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子どもを望んで不妊治療を選択する人もいる。しかし、その全員が授かるわけではないのが現実だ。母になることを願いながら、不妊治療をやめた3人の女性は、どう決断し、どのように「その後」を生きているのか。ジャーナリスト・河合蘭さんが取材します。2人目は、産婦人科病棟で働く久美さん。治療は1年と決め、体外受精にチャレンジしたが──。

子どもは3人の予定だった〈久美さん(43歳)の場合〉

「お母さんになりたかった、という気持ちが消えることはないと思います。でも私は、仕事でほかの女性の子育てを助けているので、それが私の役割なのかもしれない」

産婦人科病棟で働く助産師、久美さんは、学生時代に書いた将来のプラン表に「子どもは3人」と記したことを覚えている。しかし現実には、子どもを授かることなく43歳になった。

「最初の結婚は20代後半のとき。事務の仕事をしていました。そのときすぐ子どもをつくろうとしていれば、今ごろはプラン表に書いたように3人の子どもに囲まれていたかもしれない。でも、医療に興味を持って、33歳で看護大学に進学。生涯であんなに勉強したことはないというほど頑張って卒業し、資格を手にしたのですが、気がついたら夫とは心が離れていました」

2度目の結婚をしたとき、すでに久美さんは40歳。助産師という職業柄、女性は40代になると妊娠しにくくなる事実を目のあたりにしていた。だから、その後夫となる人とつきあい始めるとき、「私は子どもはできないかもしれない」と告げていた。

男性の「それでもかまわない」という言葉に、久美さんは温かい安心感に満たされた。子どもが好きな人なのに、子どもが持てなくてもいいから、自分と結婚したいと言ってくれたのだ。

そうして久美さんは再婚。しばらくして、同僚から「年齢を考えると、不妊治療をするには今が最後のチャンスよ」と言われ、「体外受精」にチャレンジする決心をした。