心がけているのは、身も心も身軽になること

夫との別れ、長期間にわたる自身の闘病、そして、リハビリに励む今。心和む面差しと声で、そんな日々を包みこむかのように市原さんは話し続ける。

よくテレビや雑誌のインタビューで、先輩がたが、年齢を重ねていくことや大切な人を失うことについて、お話しになりますよね。私、ああいう言葉って出てこないの。アドバイスできることなんてありません。

もちろん、戦争反対とか、賄賂は許せないとか、世の中の理不尽な出来事については、怒るし、声を上げるけれど、私的な悲劇は人それぞれでしょう? 大変だろうな、と思っても、口にすることにはためらいがあります。大変さを乗り越えるためには、その人が精一杯やるしかありません。

歳も歳だから、「老い」は自分でも身に染みていますよ。「死」ということには、大きな山を一つ越えてあっちの世界へ行くイメージを持っているけれど、それがどういうふうに襲ってきてどんなふうに山を越えるのかは、これもその人その人ですからね。どんなにポックリ逝きたくても、そうはいかない。

考えてもしかたがないことを思い悩んでも憂鬱になるだけでしょ、だからいつも笑っているの。本当にだらしのない私。今は……、今を楽しくすることに集中していますね。自分も周りも楽しくしたい、ただそれだけです。

お仕事については、いろいろ声をかけていただいて、とても感謝しています。でも、周囲の期待で自分を奮い立たせちゃダメ。期待は20%くらいいただくにとどめて、80%は「ありがとう」と心でもらって大事にします。欲をかかないようにね。

毎日の暮らしで心がけているのは、身軽になることです。塩見がいるときは、塩見がやってくれるとどこかで頼っていたのね。でも、独り身になったことで、きちっと身辺を片付けてシンプルにしておかなくては、と強く思うようになりました。モノを減らして、お部屋も小さくして、髪も短くして、リヤカーひとつで引っ越しができるような暮らしが理想です。

食器は、ご飯茶碗とお椀とお皿と小鉢があればそれだけでいい。着る物は、あいもの4枚、冬物2枚、カシミヤのコート1枚、それでけっこう。洋服ダンスに全部掛けても、すき間がたっぷりで空気が通り抜けるようにする――できたらね。(笑)