特別展
国宝 一遍聖絵と時宗の名宝

4月13日〜6月9日
京都国立博物館 平成知新館
☎075・525・2473(テレホンサービス)

日本最古の絹本著色絵巻が
庶民の営みをリアルに伝える

鎌倉時代を代表する絵巻《一遍聖絵(いっぺんひじりえ)》。本展は、神奈川県藤沢市の清浄光寺(しょうじょうこうじ)〈遊行(ゆぎょう)寺〉が所蔵する(一部、東京国立博物館蔵)この国宝全12巻を、展示巻を替えながら全巻公開する。関西では17年ぶりの展覧会だ。

【重要文化財】《真教上人坐像》鎌倉時代、神奈川蓮台寺蔵展示期間:通期

一遍上人(1239-89)とは、踊り念仏で知られる時宗(じしゅう)の宗祖である。諸国を行脚しては念仏札を配り(賦算)、踊りながら念仏を唱えて布教した。そんな一遍の生涯を、大変な資金と労力をかけて、紙ではなく絹地に描いた日本最古の絹本著色(けんぽんちゃくしょく)絵巻がこの《一遍聖絵》だ。

上人の高弟・聖戒(しょうかい)が著述し、未だ謎の多い絵師・円伊(えんい)が描いた本作は、上人の没後10年目に制作された。そのため内容には信憑性があり、描かれた各地の風景や人々の営みは、実景に極めて近いと考えられている。

たとえば東京国立博物館が所蔵する巻七では、京都七条にあった市屋道場(七条道場)の描写が圧巻だ。信者たちは鐘をたたきながら輪になって踊り、道場の周囲にはつめかけた人や牛車がひしめいている。そうした喧騒とはうらはらに、道場の床下で、柱に登って遊ぶ子どもたちの描写もリアルである。

【国宝】《一遍聖絵》(巻七円伊筆)鎌倉時代一巻東京国立博物館蔵展示期間:前期4月13日〜5月12日

ほかの巻では、富士山や厳島神社、熊野本宮大社など、今も人気の高いスピリチュアル・スポットの、700年以上も前の様子が記録されている。本作が「旅の絵巻」と呼ばれるゆえんである。

本展は、「時宗二祖上人」の没後700年を記念して開催される展覧会だ。二祖上人とは、一遍の往生後、時宗を教団として整え発展させた真教(しんきょう)上人(1237-1319)で、《一遍聖絵》制作の陰の立役者ともいわれている。展覧会ではこの真教上人の肖像彫刻をはじめ、日本各地の時宗寺院に伝えられた名宝も公開。日本美術の至宝《一遍聖絵》を堪能しながら、鎌倉時代、庶民を熱狂させた「時宗」という宗教の魅力についても考えたい。

 

ギュスターヴ・モロー展
サロメと宿命の女たち

〜6月23日
パナソニック汐留美術館
☎03・5777・8600(ハローダイヤル)

深遠なるファム・ファタル

フランス象徴主義の画家ギュスターヴ・モロー(1826-98)の作品を、「女性」に焦点を当てて紹介する。

19世紀後半に活躍したモローは、印象派と同時代の画家である。しかし目の前のものを見えるように描いた印象派の画家とは違い、彼は神話や聖書を主題としながら独自の理念や内面世界を表現した。

たとえばモローが、純潔の乙女にだけ従うという伝説の動物「一角獣」を描く時、彼が表現しようとしたのは、「処女性」や「清らかさゆえに男を惑わせる魔性」といった、目に見えない概念だった。モローが何度も描いた、踊りの褒美に洗礼者ヨハネの首を所望する女性もまた、「宿命の女=ファム・ファタル」というイメージを、聖書に出てくる王女サロメに託した表現だ。

ギュスターヴ・モロー《一角獣》1885年頃 油彩/カンヴァス 115×90cm ギュスターヴ・モロー美術館蔵 photo c RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF ※画像写真の無断転載を禁じます 

本展ではパリ、ギュスターヴ・モロー美術館の協力を得て、館所蔵の《一角獣》《出現》《エウロペの誘拐》などの重要作品がズラリと並ぶ。深遠なるテーマとともに、宝石をちりばめたような工芸的な技法にも注目だ。

 

特別展
尾形光琳の燕子花図
寿ぎの江戸絵画

4月13日〜5月12日
根津美術館
☎03・3400・2536

琳派の名作
黄金に輝く屛風とともに

カキツバタの花が咲くこの季節に、根津美術館で毎年公開される国宝《燕子花(かきつばた)図屛風》。江戸時代中期、琳派(りんぱ)の尾形光琳(おがたこうりん)が描いた本作は、平安時代に書かれた『伊勢物語』の主人公が、三河国(現在の愛知県)八橋に咲くカキツバタを見て歌を詠むという有名な場面に基づいた作品ともいわれている。

そこで本展では、「王朝文学」「草花図」「名所」という3つのテーマにちなんだ江戸絵画を展示。会期中に迎える御代替(みよが)わりを、黄金の輝きを放つこの屛風とともに寿ぐ展覧会でもある。

【国宝】尾形光琳筆《燕子花図屛風》(右隻) 日本・江戸時代世紀根津美術館蔵