フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》1888年 油彩・カンヴァス92.1×73cm ©The National Gallery, London. Bought, Courtauld Fund, 1924

 

各時代の最高作が一堂に

イギリスが世界に誇るロンドン・ナショナル・ギャラリー。1824年の創立以来、世界で初めて61点もの作品を館外で公開する本展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」は、日本人にはもちろん、美術館にとっても歴史的な展覧会といえるだろう。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、世界の美術館の教科書的な存在だ。ルーヴル美術館やプラド美術館など、それまでに開館した美術館の多くが王侯貴族の私的なコレクションを核としているのに対し、同館の作品は、市民のために、あくまで客観的な視点から各時代の最高峰の作品が満遍なく集められているからだ。

現在、その姿勢は世界の公立美術館のスタンダードになってはいるが、ロンドン・ナショナル・ギャラリーほど質の高いコレクションを持つ美術館はないといわれている。

カルロ・クリヴェッリ《聖 エミディウスを伴う受胎 告知》1486年 卵テンペラ・ 油彩・カンヴァス 207× 146.7cm ©The National Gallery, London. Presented by Lord Taunton, 1864

 

本展も、フェルメール、レンブラント、ヴァン・ダイクを含め、ルネサンスから19世紀ポスト印象派まで、巨匠たちの傑作がずらりと並ぶ。なかでも注目はゴッホの《ひまわり》。ゴッホは花瓶に生けたひまわりを生涯7点制作したが、アルルでゴーガンとの共同生活を夢見て描いた本作は、彼の浮き立つ心を物語るように生命力にあふれている。

そのほか、ルネサンスの画家クリヴェッリの《聖エミディウスを伴う受胎告知》も見逃せない。正確な遠近法を駆使した、マリアや天使のいるきらびやかな街の描写に、目を奪われることだろう。

 

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なぜ他人に扮するのか?

名画や映画の登場人物、または歴史的な人物に扮したセルフポートレイトで知られる現代美術家・森村泰昌(1951-)。東京では10年ぶりとなる本展「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020─さまよえるニッポンの私」は、彼の美術家としてのアイデンティティを問う展覧会だ。

第二次世界大戦の敗戦後に生まれた森村は、日本の伝統的な価値観を否定し、アメリカ(欧米)の「進んだ」価値観を信奉する教育を受けた世代。そんな時代の空気の中で育った彼は、「真理や価値や思想というものは、自由に着替えることができる」という発想にいたる。

そして、人種や性別を超えてさまざまな人物になりかわることで、「自分とは何か」を問いただしてきた。展覧会のタイトル「エゴオブスクラ」も「闇に包まれた曖昧な自我」を意味する造語である。

本展は、映像作品『エゴオブスクラ』を中心に、森村のセルフポートレイトの世界を紹介。映像は50分の大作だが、これを見ると、なぜ彼が三島由紀夫やマリリン・モンローに扮することにこだわってきたのかがわかるはずだ。

映像作品「エゴオブスクラ」より 2020(参考写真)©Yasumasa Morimura

 

 

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春の訪れを感じる名画

この時期、この美術館に行けば、必ずこの作品に会うことができる。そんな季節に即した代表作を持つ美術館は日本にいくつか存在するが、観る者に春の訪れを感じさせてくれる作品といえば、やはり熱海にあるMOA美術館の《紅白梅図屛風》。

毎年1月末から3月中旬にかけて同館では、琳派の巨匠・尾形光琳の名作を、館が誇る数々の名品とともに観ることができる。

《紅白梅図屛風》を観たあとは隣接する瑞雲郷(ずいうんきょう)梅園で、本物の梅の花を楽しむのもオススメだ。

【国宝】尾形光琳《紅白梅図屛風》江戸時代