《echo》Chara+YUKI

 

新たな挑戦と色褪せない才能

Chara+YUKI が再始動を果たし、8曲入りのミニアルバム《echo》をリリースした。1999年にシンガーソングライターの Chara と当時 JUDY AND MARY のヴォーカリストだった YUKI によるユニットとして結成され、シングル〈愛の火 3つ オレンジ〉をリリースして以来、約20年ぶりだ。1曲限りの活動だったが、その後もそれぞれ第一線で活躍してきた両者によるコラボレーションが再び実現した。

2人が歌うだけでなく、全曲のプロデュースを「Chara+YUKI」名義で手掛けた本作。一聴して印象的なのは、時代を経ても色褪せない、洒脱かつ先鋭的な楽曲のセンスだ。Chara がサウンドを、YUKI が歌詞をトータルプロデュースすることで、それぞれのソロとは違う新たな魅力が引き出されている。また、気鋭の若手プロデューサーやミュージシャンを招いた制作陣にも注目だ。

たとえば、シングルとしてもリリースされた〈楽しい蹴伸び〉はジャズの要素を活かした心地よいアーバン・ソウル。作曲とサウンドプロデュースを手掛けたのは、近年 Chara のツアーでバンマスも務めてきたマルチプレーヤーの TENDRE こと河原太朗だ。

幻想的なポップソングの〈鳥のブローチ〉もまた、Chara の作品やライヴに参加し、ユニークな音楽性で高い評価を集める Kan Sano によるもの。

20年前の楽曲を大胆にリアレンジした〈愛の火 3つ オレンジ (2020 version)〉では、東京とロサンゼルスで活動する新鋭ヒップホップ・クルー、CIRRRCLE のA.G.O を起用。可愛らしいメロディとビートに、ホーン隊の盛大な響きが融合した曲に生まれ変わっている。

こうした若い世代のサウンドプロデューサーと意欲的に組むことで、Chara+YUKI の色褪せない歌声との新しい化学反応が生まれている1枚だ。

《echo》
Chara+YUKI
エピックレコード 2500円

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《1》KERENMI

 

センスと個性を押し出した1stアルバム

YUKI の代表曲〈JOY〉のプロデュースを手掛け、最近では Official 髭男dism をブレイクに導くなど、日本を代表する音楽プロデューサーとして活躍する蔦谷好位置(つたやこういち)。彼が自身のソロプロジェクトとしてスタートさせた KERENMI が、1stアルバム《1》を完成させた(ネット配信)。

収録されているのは、若手からベテランまでさまざまな歌手やラッパーをゲストに招いた全10曲。アーティストの魅力を引き出すことに徹したプロデュースワークと違い、最先端の音楽シーンにアンテナを張り続ける蔦谷のセンスが活かされた、トラックメイカーとしての個性を押し出した楽曲が並ぶ。

〈KOTOSARA night and day feat. Chara, 高岩遼(SANABAGUN.) & GOODMOODGOKU〉では、メロウなトラックに乗せてChara と高岩遼の2人が色気ある歌声を披露。

〈ROOFTOPS feat. 藤原聡(Official髭男dism)〉はデジタルなサウンドにR&Bとゴスペルを導入した挑戦的な曲調となっている。

また、アリアナ・グランデの最新作を彷彿とさせるゆったりとしたビートが気持ちいい〈からまる feat. 大比良瑞希〉や、18歳の現役女子高生ラッパーの「玉名ラーメン」を抜擢し、ささやくようなラップとローファイ・ヒップホップのひんやりとしたサウンドを融合させた〈OverNight feat. 玉名ラーメン〉など、若い才能を積極的に起用しているのもポイントだ。

一方はカリスマ女性シンガーの2人が気鋭のサウンドプロデューサーを、そして一方は音楽シーンを支える実力派プロデューサーがさまざまなシンガーやラッパーを招いて作った、Chara+YUKI と KERENMI の新作。どちらにも共通しているのは、時代の潮流を敏感にキャッチしながら次世代とも旺盛に交わる、クリエイターとしての挑戦意欲と言えるだろう。

《1》
KERENMI
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