渦中の安倍昭恵・首相夫人。2017年4月13日撮影(写真提供:読売新聞社)
安倍晋三内閣総理大臣の妻、昭恵さん。居酒屋を経営するなど、現職総理の妻らしからぬ自由奔放な行動が話題になってきました。しかし、森友学園の問題が表沙汰になると、彼女の“不可解”な思想にも注目が集まり……。2017年、森友問題が世間を騒がしていた頃、「昭恵さんなるものの本質」を、作家・雨宮処凛さんと政治学者・中島岳志が分析した記事を再掲します。(構成=古川美穂 撮影=本社写真部 写真提供=読売新聞社)

女性誌の人気企画の上澄みを詰め込んだような

中島 森友学園問題を機に、安倍昭恵さんの言動が注目を浴びていますね。

雨宮 私の中で、昭恵さんはずっと「不思議ちゃん」のイメージです。何が彼女の言動の核をなしているのかがわかりにくく、つかみどころがない。反原発で、エコロジーやスピリチュアル系が好き。大麻に関心があり、居酒屋を経営する自由奔放な首相夫人。でも同時に、園児に教育勅語を暗唱させる塚本幼稚園の教育方針に感動の涙を流すような、国粋主義的な一面も持っている。

中島 はい。同じ森友学園が設立しようとしていた瑞穂の國記念小學院の名誉校長まで引き受けていたのですから、そうした思想に共鳴していたと言っていいでしょう。

雨宮 本人の中に左と右が矛盾なく同居している。それに加えてスピリチュアルとか神道、占いなど、女性誌の人気企画の上澄みを全部詰め込んだような感じもあって、すごく今の時代を象徴していると思う。先日私が昭恵さんを、ゆるくて軽い「ゆるふわ系愛国」と記事に書いたら大きな反響がありました。きっと皆、この人はいったい何を考えているのだろうと感じていたんでしょうね。

中島 おっしゃる通り、原発やTPP、巨大防潮堤の建設に反対するなど、彼女の言動の表面は左派的です。有機農業に取り組んで「昭恵米」を作ったり、沖縄でエコロジー系の活動をしているミュージシャンの三宅洋平さんと、高江にある米軍ヘリパット建設予定地にがる建設反対派の本拠地を訪れたりもしている。ところがその一方で、歴史認識ではかなり強硬なことも言っています。

雨宮 『文藝春秋』2017年3月号に掲載された石井妙子さんのルポルタージュ「安倍昭恵『家庭内野党』の真実」の中で、昭恵さんは「主人と意見が違うように見えても、目指すところは一緒で、日本を取り戻したいんです」と発言をしていますね。

中島 インターネットサイトのBLOGOSで社会学者の西田亮介さんと対談したときも、昭恵さんは「日本の精神性が世界をリードしていかないと『地球が終わる』って、本当に信じているんです」と語っている。相当に右派的な発言です。本当は左なのか右なのか、どっちなのだと。

雨宮 たしかに戸惑います。