イラスト:山崎のぶこ
せっかく気分が乗って片づけできたのに、あとになって、なぜか悔いることも。それは、自分が「モノ」以上の何かを捨てたのでは……、とふと我に返るからかもしれません。梶原さん(仮名)宅には、次から次へと怪しい買取業者から電話がかかってきてーー(「読者体験手記」より)

アクセサリーを買い取りたがる

ある日、家に一本の電話がかかってきました。

「お宅に不用品はありませんか。いらないお洋服とかあるでしょう。高値で買い取ります」

かけてきたのは、リサイクル業者のようでした。結婚して40年。子どもたちは独立し、昨年、義母も他界。いまは夫と2人きりの生活となりました。子どもたちの残していった衣類、義母のタンスの中の着物。確かに服は捨てるほどあります。ただ、値段のつくようなものは皆無です。

丁重にお断りしたのですが、「捨てるようなモノでいいんです」と電話口の女性は、なかなか引き下がりません。なんでも、いまは外国の人が古着を爆買いしにくるらしく、いつも在庫が不足しているのだとか。「1日300着の買い取りを目指しているので、なんでもいいから出してください」と繰り返します。

「それならいいわよ。着物でもいいの?」

「もちろん着物も大歓迎です。2時くらいにお宅に伺ってもよろしいですか」

「ええ。でも引き取ってもらえれば十分なので、お金はいりません」

するとその女性は、「ちゃんと買い取りますから」と言ったあと、突然「アクセサリーの買い取りもしているので、伺った際はいらない指輪でもあれば見せてください」と言い出しました。それはさすがに、ない。いくら使っていなくても、アクセサリーは特別なものです。できれば子どもに残しておきたい。

そう伝えると、「いまの若い方って、アクセサリーなどもらっても喜ばないでしょう」と言います。確かにそれはそうかもしれません。

「今日、サイズの合わない指輪を出してくださったあるお客様に6000円をお支払いしたら、とても喜んでくださったんです。お友達とのお茶代の足しにする、とおっしゃっていましたよ。梶原様も、おもちゃのようなアクセサリーでもかまわないですからね」

相手の感じが良かったので、つい家に来ることをOKしてしまったものの、やってきたのは電話の女性とは違う男性でした。そして、私がせっかく出した着物や洋服、靴には目もくれず、「アクセサリーを見せてください」とばかり言います。

言われるままに指輪やネックレスを差し出すと、「3万円で買い取りますね」と言って持って行ってしまいました。しばらくして、「お預かりしたのは、指輪2点、ネックレス1点でお間違えないでしょうか」という電話があったので、「はい」と答えると、電話の向こうで「○○さん、ナーイス」という声が聞こえました。すぐに電話を切りました。