内科医のおおたわ史絵さんが、『婦人公論』5月14日号で「母の薬物依存」について語った記事が話題です。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍する、医師のおおたわ史絵さん。自身のクリニックを閉じ、この1年は矯正施設で勤務しているといいます。なぜ、その道を選んだのでしょうか。そこには、自身の母親の存在が影響しているようでーー。発売中の『婦人公論』より、注目記事の一部を公開します

死ぬほどやめたいのに、死ぬほどやりたい

母は異常なほどの教育ママでした。娘を医者にすることだけが目標のように見えました。私が小学校に入学したあたりから、失敗すると物差しで叩く、椅子から叩き落とす。帰りが遅くなれば手にお灸を据えると脅され、泣きながら許しを乞うたものです。飲み物に下剤を入れられたこともありました。体罰はどんどんエスカレートしていきましたが、母の期待に応えようと私も必死でした。

体調不良から、体の痛みを訴えるようになった母に父が麻薬性の鎮痛剤を注射したことから、母は薬物依存へと陥っていきます。もともと看護師だった母は自宅の階下にある病院から鎮痛剤を勝手に持ち出しては、自分で腕や脚に注射を打つことも容易にできたため、事態はたちまち深刻化したのです。私が中学生になる頃には母の体は注射痕だらけで、精神科に入退院を繰り返すようになっていました。

退院すると母は決まって私に弱気な表情を見せ、「今度こそママは薬をやめるからね」と告げるのですが、翌日には別人のように平然とまた注射を打っている。何度こうして裏切られたことでしょう。使用済みの注射器や空になったアンプルがそこかしこに散乱している。そんな恐ろしい光景がいつしかわが家の日常になっていました。

当時は、なぜ母は平気で私を裏切るのだろうと打ちひしがれていたのですが、医学を学んだ今ならわかります。死ぬほどやめたいのに、死ぬほどやりたいのが依存症なのだと。依存を断つことができないのは、意志が弱いためではなく脳の問題。薬物依存に限らず、アルコール依存もギャンブル依存も買い物依存もセックス依存も、あらゆる依存症は恍惚感の刻まれた脳に支配され続ける病です。


続きは発売中の『婦人公論』2019年5月14日号にてお読みください。


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