イラスト:花くまゆうさく
テレビや新聞、街中のポスターなどで見かける特殊詐欺への注意喚起。この瞬間にも、高齢者を中心に大切な財産が奪われ続けています。どんな点に気をつければいいのか、警察庁に話を聞きました(構成=吉川明子 イラスト=花くまゆうさく)
《2019年の被害状況》
認知件数 1万6836件
被害額 301.5億円 ※1日当たり約8260万円
被害者のうち65歳以上の女性が 65 %

網の目をかいくぐる詐欺グループ

多くの人が一度は耳にしたことがある「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」は、詐欺犯罪のなかでも「特殊詐欺」と呼ばれます。これは電話をかけたり、ハガキを送ったりして対面することなく信頼させ、現金をダマし取る犯罪の総称です。

かつて詐欺といえば、「儲け話がある」「投資しませんか」といった利殖型が主流でした。ですが、この方法は相手を信用させるだけの資料を作らなければならなかったりと、非常に手間がかかる。一方で特殊詐欺は、100人に電話をかけて1人でもダマせれば簡単に大金を得ることができるため、一気に全国に広がっていったと考えられます。

2019年の特殊詐欺の認知件数は全国で約1万7000件、被害額は約301億円と、前年に比べて減少はしているものの、依然として大きな被害であることに変わりありません。

なぜ被害がなかなか減らないのか。それは、対策を講じるたびに、犯人側の考える手口がますます巧妙化・複雑化していくからでしょう。

こうした詐欺の実態を警察庁が把握し出したのは、03年頃のこと。当初は息子や孫を騙ってお金をダマし取る手口が主流でしたが、そのことが世間で認知されると、警察官や弁護士など、社会的に信用されている立場の登場人物がたくさん現れる“劇場型”へと進化してきました。

また、お金をダマし取る方法も、「ATMから指定の銀行口座に振り込ませる」「宅配便やレターパックで現金を送らせる」といったやり方から、「プリペイドカードを購入させる」「キャッシュカードを直接ダマし取る」方法へと変化してきています。このように、「特殊詐欺はあの手この手で現金をダマし取る」のが実情ですから、特殊詐欺の種類や手口の巧妙さを知っておくことは被害の防止につながるでしょう。そのため警察庁では、捜査のみならず事件を未然に防ぐための広報活動にも力を入れています。