さわひらき《Souvenir IV》2012年

現代美術家と館の所蔵作品とのコラボレーション

現代美術の専門美術館が日本に少なかった頃から、国内外のコンテンポラリーアートを扱ってきた千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館。本展「ふたつのまどか─コレクション×5人の作家たち」はその30周年を記念して開催される。美術展のタイトル「ふたつのまどか」は、エントランスホールの天井照明やステンドグラスなど、同館にちりばめられた「重なる二つの円」のモチーフを指す。円が重なった時に新たな意匠が現れるこのモチーフのように、現在第一線で活躍する5名の現代美術家の作品と、館の所蔵作品とのコラボレーションにより、芳潤な現代アートの空間を作ろうという試みだ。

たとえば家の中をおもちゃの飛行機が飛び交うなど、幻想的な映像作品で知られるさわひらき。彼が相対したのはアメリカの現代美術家、サイ・トゥオンブリーの作品である。さわの映像作品《Souvenir ⅠⅤ》にとらえられた回転するダンサーの美しい軌道と響きあう、画面を何度も行き来して描かれたトゥオンブリーのクレヨンの線。二人の作品からは、「時間」という概念を強く感じさせられることだろう。

また、本や文房具に手を加え、彫刻やオブジェ、コラージュなどの作品を制作してきた福田尚代は、やはり古書や雑貨などで独自の世界観を表現したアメリカの作家ジョゼフ・コーネルの作品と合わせて展示される。福田の《ラ・シャット・エマイヨールへの手紙》は、古い葉書から剝がされた切手が文庫本のページに整然と貼られた、とても詩的な作品だ。

そのほか、野口里佳、杉戸洋、渡辺信子らの作品が、館所蔵の思いがけない作家の作品と対話することで、お互いを引き立たせる心地よい展示空間が実現した。ひそやかで穏やかな作品群は、現代美術とコレクションの新たな魅力を教えてくれることだろう。

 

 

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モデルは八百屋の飼い猫だった

山種美術館が所蔵する近現代の日本画の作品から、魅力あふれる動物表現を紹介。なかでも高い人気を誇る竹内栖鳳(せいほう)(1864-1942)の《班猫(はんびょう)》が、約4年ぶりに登場する。

「東の(横山)大観、西の栖鳳」と並び称された竹内栖鳳は、明治から昭和初期にかけて京都画壇を牽引した日本画家。さまざまな主題を手がけたが、動物画の名手でもあった。《班猫》は、そんな彼の60歳の時の傑作。モデルの猫は、栖鳳が沼津滞在中に見つけた八百屋の飼い猫であった。絵心をかき立てられたために飼い主に交渉して京都に連れ帰り、連日、画室で遊んでいるところを観察し作品を仕上げたという。猫のしなやかな動きや表情、柔らかな毛並みまで見事に写し取っている。

そのほか、栖鳳の弟子の西村五雲や橋本関雪(かんせつ)ら動物画の名手の作品や、小林古径(こけい)や速水御舟(ぎょしゅう)ら日本画の名匠たちが描いた動物画も。犬や猫から蛙まで、個性豊かな動物たちに、心癒やされるに違いない。

竹内栖鳳《 班猫》【重要文化財】 1924(大正13)年 絹本・彩色 山種美術館

 

 

 

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デジタルアートで印象派の名画に没入しよう

「Immersive Museum(イマーシブミュージアム)」とは、「没入体験型ミュージアム」の意。天王洲にある寺田倉庫の広大な空間に、最新のテクノロジーを駆使したデジタルアートが展開する。そこに広がるのは、印象派の世界。印象派を象徴するモネの《印象、日の出》や、彼が後半生を捧げた睡蓮の池、また「生きる歓び」に満ちたルノワールの《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》などの映像が投影され、その中を自由に歩き回って、作品そのものを体感する。絵画に没入することで、彼らが何を見て、どう表現したのかを体験することができるだろう。

©RMN-Grand Palais(musée del'Orangerie)/Michel Urtad/AMF/amanaimages