国宝《曜変天目(「稲葉天目」)》 建窯 南宋時代(12-13世紀)( 公財)静嘉堂蔵

世界に3碗のみ、奇跡の器ほか岩崎家の国宝を選りすぐって

三菱創業150周年と、三菱一号館美術館10周年を記念して開催されるコレクション展。三菱ゆかりの静嘉堂と東洋文庫より、国宝12点をはじめとする100点あまりが集結する。美術史的にも東洋史的にも、貴重な名品が一堂に並ぶ、極めて貴重な機会である。

1870(明治3)年、岩崎彌太郎(やたろう)が九十九(つくも)商会を設立し、海運業を始めて以来、事業を発展させていった三菱。その創業家4代の社長たちは、当時の学者や芸術家との交流を通じて、文化財に多大な関心を寄せてきた。第2代の彌之助(やのすけ)は、西洋文化偏重の時代に散逸を防ぐため、日本・東洋の美術品や典籍の収集につとめ、静嘉堂文庫創設に着手。第3代の久彌(ひさや)は、和漢の古典籍からなる岩崎文庫の拡充をはかり、アジア最大の東洋学研究所(東洋文庫)を設立した。

その膨大なコレクションから選りすぐりの名品約100点が紹介される本展で、まず注目したいのが、静嘉堂の代名詞ともいうべき《曜変天目(ようへんてんもく)》である。淀(よど)藩主・稲葉家に伝えられたことから「稲葉天目」とも呼ばれるこの茶碗は、内側に現れた星のような斑文と、青くきらめく光彩が特徴。完全な形で現存するのは世界に3碗という(しかもすべて日本にあり、いずれも国宝)貴重な天目茶碗だが、なかでも本作は光彩が最も鮮やかに浮き出た奇跡の器だ。

国宝《毛詩》初唐(7-8世紀)(公財)東洋文庫蔵

また東洋文庫所蔵の《毛詩(もうし)》も公開される。こちらは孔子が編纂した中国最古の詩集『詩経』を、毛亨(もうこう)と毛萇(もうちょう)が写したために『毛詩』と呼ばれる、現存最古の写本である。

そのほか琳派の祖・俵屋宗達が描いた国宝《源氏物語関屋澪標(せきやみおつくし)図屛風》や、鎌倉期の名刀など多彩な作品がズラリ。社会貢献のため広い視野で築かれたコレクションに、資本家の使命感を感じとることができるだろう。

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“ベルばら”でおなじみの人物も

17世紀の古典主義から、18世紀のロココ、19世紀の新古典主義、ロマン主義を経て印象派誕生前夜までの3世紀に及ぶ壮大なフランス絵画の流れを、ヴェルサイユ宮殿美術館や東京富士美術館など国内外のコレクションで紹介する。サブタイトルの「ルネ・ユイグ」(1906-97)とは、1937年、31歳でルーヴル美術館の絵画部長に就任し、第二次世界大戦時にはルーヴルの絵画コレクションを、ナチス・ドイツから守った美術史家として知られている。

厳格な古典主義の代名詞であるニコラ・プッサンや、華やかなロココの申し子ジャン=アントワーヌ・ヴァトーなど、各時代を代表する巨匠たちの作品に加え、ヴィジェ・ルブランのような女性画家の作品も観ることができる。下は彼女が描いたポリニャック夫人の肖像である。王妃マリー・アントワネットと最も親しく、王妃の子どもたちの教育係を務めたポリニャック夫人は、池田理代子氏のマンガ『ベルサイユのばら』ではおなじみの人物。実際の肖像画で見ると、味わいもひとしおだ。

エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン《ポリニャック公爵夫人、ガブリエル・ヨランド・クロード・マルチーヌ・ド・ポラストロン》ヴェルサイユ宮殿美術館 Photo©️RMN-Grand Palais(Château de Versailles)/Gérard Blot/distributed by AMF

 

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癒やしの現代美術作品 地球の神秘に共鳴する

アメリカ人の海洋生物学者レイチェル・カーソン(1907-64)は、遺作となった著書の中で、「地球の美しさと神秘を感じとれる人は、(中略)人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてない」と述べている。静岡にあるヴァンジ彫刻庭園美術館主催の本展では、「神秘さや不思議さに目を見はる感性(センス・オブ・ワンダー)」を持つ現代美術家7名の作品を紹介する。本物の花と見まがう須田悦弘の木彫作品や、クリスティアーネ・レーアの植物の種を用いた繊細な作品に癒やされる。

須田悦弘《踊場》2018年©︎Yoshihiro Suda