国際社会がそう言ってるんだから、日本だってやらなくっちゃ!

なんてったって日本は、いまをときめく「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の国! 世界に認められた経済大国なのだからね──っと、お若い方へ念のため、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とは、70年代の終わりに書かれた、本のタイトルである。

書いたのはエズラ・ヴォーゲルさんというアメリカの社会学者。エズラさんは58年よりたびたび来日、数年間日本に住んだりもして、日本の社会を研究した。実業界のトップ100人にインタビューもおこない、すぐれた工業製品を世界に送り出し、卓越した経済力を誇った「日本式経営」について、研究・考察されている。

たとえば、「大企業内における忠誠心は、実に複雑に何層にも重なりあって、迷宮の様相を呈している」だとか、日本の企業内で先輩が後輩の面倒をよくみる様子は欧米人の目に「母親のような世話のやき方」と映る、だとか、昇進のための資格基準のうちでもっとも重要なのは協調性、「出世できる人間は独創的な考えの持ち主ではない」だとか……そうそう、日本の会社ってそうかもねえ……といった耳の痛い分析。「一部の日本人は国内の結束を固めるためなのか、あるいは外国からの圧力をかわそうとするつもりなのか、日本の将来の危ない面を意識的に強調する傾向がある」、そして日本とアメリカは〈かけ離れている〉などといったさりげない指摘、記述も見逃せない。とにかくこの本が注目されたことで「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は、イケてる日本の総称になった。

一方、これを書いた人の本国・アメリカでは、社会のさまざまな面で行き詰まり、危機意識が高まっていた。ソ連(主にいまのロシア)との対立で軍事費にお金がかかりすぎ、国内産業は良質で安い日本製に押され、アメリカ製品は国際競争力を失い、国際収支は悪化、ドルは下落、国内はインフレ、失業者は増加、でもって犯罪も増加……そんななか、不満の矛先は、好調国へと向けられた。

「Whyオレたちアンハッピーなの? これってニホンのせいじゃない?」

と、日本バッシングが急速に高まった80年代。総合商社マンだった私の父は、世界のあっちこっちで大きな商いをしており、当時の日本叩きをよく覚えているという。そしてその一環と言っていいのかどうかプラザ合意、ルーブル合意、といった為替レートの調整でもって日本の〈儲かりすぎ〉は修正され、あれよあれよというまにグローバリゼーションはすすめられていった。そのようにしてアメリカによる貿易自由化への圧力が増していくなか、日本人たちは、判断を見誤ったか、先送りした。汗をかかずに稼ぐ、土地と株、の儲け話に、乗っちゃったのである。それが投資バブルを生み出した。