イラスト:泰間敬視
いつまでも介助のいらない体で、楽しく長生きしてほしい。それは紛れもない子どもの本心です。でも衰えを知らない行動力、時にこちらを圧倒する我の強さを見せつけられ、振り回され続けると──小森谷智子さん(仮名)の頭痛の種である義母。驚きのふるまいは?(「読者体験手記」より)

呼吸をするように嘘をつく

あれは数年前、スーパーでの出来事だった。私がレジに並んでいると、入り口付近で待つ夫のすぐそばで、義母がワゴンの中の何かをバッグに隠した。驚いた夫が問い詰めると、「そこにいた人にもらった」と白を切る。盗ったのは、飲料についたオマケだった。

ゾッとしていつも義母がお世話になっている地域包括支援センターの担当者に相談すると、「この方の場合、行きつくところまで行くしかありませんね」とけんもほろろ。どういう意味なのか。次の万引きで警察に捕まるまで? 体が弱って動かなくなるまで? それとも私が精神的に参って入院するまで?

困惑する私をよそに、夫も義妹たちも簡単に納得する。私はまずは警察に相談した。「認知症かどうか、診断を受けてください。また予防策として、お義母さんの写真を近隣のスーパーに見せて相談しておくとよいでしょう。なにかあったら家族に連絡してほしい、と頼むことを忘れずに」と教えてくれた。

9年前、義母のかかりつけ医の勧めで同居して以来、そのモンスターのような性格にはずっと悩まされてきた。義妹によれば、「私ほど不幸な人間はいない。親が早死にしなかったら、兄嫁にいじめられなかったら」と悲劇のヒロインぶるのは昔からだという。いつも自分だけが正しく完璧で、悪いのは周りだと思う性格。それが義母に対する家族の共通認識である。

ある時は、「人殺し!」と自宅の窓から外に向かって大声で叫ぶ。それは義母が床にこぼした水を、夫の新品のシャツを雑巾代わりにして拭き、その現場を目撃した夫が注意したからだった。義母は本当はきれい好き。わざとやっているのは、明らかである。

シャンプーや洗剤を水増しされたこともあった。「私のを使うのはかまいませんが、水は入れないでくださいね」と言うと、「一度も使ってません!」と呼吸をするように嘘をつく。

耐えきれず「どうして嘘ばかりつくんですか?」と聞くと、「ほら、ここ叩いてみ」とほっぺたを突き出してきた。おっと、その手には乗らない。指一本でも触れたら、大騒ぎだ。ケアマネさんからの注意に飽きると、「もうしません。指切りげんまん」と話を打ち切るなど、実は策を練るのにも長けている。