澤田真一《無題》制作年不詳

内から湧き出る欲求から生まれる「あるがままの芸術」

戦中・戦後と日本全国を放浪しながらちぎり絵を制作した山下清のように、この世にはさまざまなハンディキャップを持ちながらも、驚異的な作品を生み出し続けている人々がいる。本展は、特定の文化や既存の美術、流行、専門教育などに影響されることなく、自身の芸術的な衝動に従い、ただひたすらに独自の世界を創造している国内外のアーティスト25名、約200点の作品を紹介する。

絵画、手芸、彫刻とあらゆる作品があるなかで、ひときわ目を引くのは、澤田真一の《無題》だろう。南洋の神々や未開の地に潜む妖怪・妖精の類を思わせる陶芸オブジェで、体中をとげのような突起物が覆う。小さな突起を黙々と形にし、粘土を削ってこだわりの質感を作り出す。その集中力や情熱に、ただただ圧倒される作品だ。

また渡邊義紘(よしひろ)の《折り葉の動物たち》も、他に類を見ない、独創的な作品だ。「折り葉」とは、小さな枯れ葉を折り紙のように折る渡邊オリジナルの手法だそう。この技法を駆使して彼が作るのは、小さな小さな動物たちの世界。その細かさにもかかわらず、動物それぞれの特徴がとらえられていることに驚嘆する。

従来の西洋美術の伝統的価値観を否定して「あるがままの芸術(アール・ブリュット)」を提唱したフランス人画家、ジャン・デュビュッフェは、通常のアーティストは「自分の芸術を半分しか信じられず、芸術の外側にある慣習的な人生を生きて」いると言った。

しかし彼が見いだし、また本展で紹介されているような独学の作家たちは、自らの芸術に疑問を持つまでもなく、他人の評価など気にせずに内から湧き出る欲求に従って、作品を作り続けている。そのゆるぎなさ、潔さはうらやましい限りである。(要事前予約)

渡邊義紘《折り葉の動物たち》2003年─(c)NHK/プラネタフィルム

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『なつぞら』でも注目された画家の代表作を網羅

2019年、NHKの連続テレビ小説『なつぞら』に登場した画家・山田天陽のモチーフ、神田日勝(かんだにっしょう)(1937-70)。32歳で夭折した彼の代表作を網羅した展覧会が、彼の故郷・北海道河東郡(かとうぐん)鹿追町(しかおいちょう)にある神田日勝記念美術館で大々的に開かれる。

日勝が7歳の時、北海道に渡った神田家。彼らが鹿追に入植したのは、なんと終戦の1日前だった。そのため約束されていた国からの援助がないまま、厳しい自然の中で、一家は北の大地を開墾する。東京藝術大学に入学した兄の影響を受けた日勝もまた、農業をしながら、日々の喜びや悲しみ、葛藤を描いた。

そんな彼の未完の傑作が《馬(絶筆・未完)》である。日頃の農作業と制作、展覧会の準備などで忙殺され、体調を崩して帰らぬ人となった日勝の画室に残されていた作品だ。描かれているのは馬の前半身だけで、後半身の部分はベニヤ板の地が露出したまま。しかし、まるで大地を耕すように、一筆一筆魂を込めて描かれた馬の力強さには、目を見張らずにはいられない。

《馬(絶筆・未完)》1970年 神田日勝記念美術館

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プリズムの輝きが漂う注目のインスタレーション

1979年生まれの松尾高弘は、映像やライティング、プログラミングなどあらゆるテクノロジーを駆使して、幻想的な光のインスタレーションを制作しているアーティスト。

2009年、イタリア・ミラノで開催される世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」で発表した作品が話題になって以来、数多くのラグジュアリーブランドとタイアップして、光のアートを手がけている。

本展ではプリズムの透明な輝きを放つ《FLARE》を含む、全3点のインスタレーションが、唯一無二の光の美空間を創り出す。(要事前予約)

《FLARE》