思い出に残るジャニーさん(イラスト=えるたま)
昨年7月に惜しまれつつ亡くなった、ジャニーズ事務所前社長のジャニー喜多川さん。あれから1年、ジャニーズの歴史を見つめてきた近田春夫さんと、『ジャニ研』などの著書のある矢野利裕さんが、ジャニーさんが世に送り出したアイドルたちを振り返りつつ、その魅力をひもときます。後編は特徴的な歌い方から…(構成=上田恵子 撮影=本社写真部 イラスト=えるたま)※文中敬称略

〈前編はこちら

素朴で粗削り、真っすぐな歌い方

近田 ジャニーさんは、グループ名を本能でつけていた気がするんだよ。音楽活動についても同じで、少なくとも僕が知る限りマーケティングとは無縁だった。

矢野 ヒットを狙って市場を分析していたとは考えにくいですよね。あとジャニーさんについて感じるのは、成長過程の人やグループへの思い入れの強さ。ジャニーさんって、デビュー前から直後くらいの粗削りな時期に一番こだわるんですよね。でもデビュー後に洗練されていくことには、あまり関心がないように見える。将来どうなるかわからない、予定調和じゃないところに魅力を感じていたのかな、と。どこかたどたどしいところが残っているのがジャニーズらしさとされているように思えます。

近田 それを聞いて思い出したんだけど、ジャニーズの歴史のなかでひとつ特徴的なのは歌い方。たとえばJ-POPの人って英語っぽく歌うけど、ジャニーズは小学校の時の合唱みたいに、素朴で真っすぐな歌い方をするんだよ。そんななかで最初にクセのある歌い方をしたのはキムタク(木村拓哉)で、彼以降そういう歌い方をする人も増えたけど、基本的には皆ハモらないし、言葉が聞き取りやすいユニゾン(複数の人が同じ旋律を歌うこと)でしょ?

矢野 確かにそうですね。

近田 ビブラートもかけなければ声も作らない。多分それがジャニーさんの好きな歌い方だったんだろうね。最近は歌が上手い人もたくさんいるけど。

矢野 結局はジャニーさんなんですよね。ルックスに関してもそうで、ジャニーさんが「YOU、いいね」と言うと、それが“ジャニーズ顔”になる。イケメンなら選ばれるというわけじゃなく、彼に選ばれた人たちが次代のジャニーズ系になっていく。

近田 僕の持論なんだけど、ジャニーズのアーティストは必ずフォーリーブスの誰かに似ているんだよ。たとえば草なぎ(剛)くんと郷ひろみは眉毛が太いでしょ? あれはどこから来ているかというと青山孝史なの。キムタクなら甘い感じの江木俊夫がルーツかな。キャラクターで言うと、中居(正広)くんの調子いい感じはおりも政夫だろう、とかね。今いるグループのメンバーを当てはめてみると、結構面白いと思う。

矢野 脈々と受け継がれている流れがありますよね。ただ、今までのように中性的でジェンダーレスみたいな部分は残っているにしても、最近は少し男臭くなってきたのかな、という気もします。

近田 確かに変わってきている。それはジャニーさんが老いたことも影響していただろうし、日本の若い人の顔が全体的に変化してきたせいもあるだろうね。