異臭に気づいて目覚めると……

深夜0時になって、やっと気持ちのよい深い眠りにつけた。

うっ! 臭い……隣のベッドから強烈に臭ってくる。眠い目をこすりながら起きて、母の元へ。

何これ!? パジャマもおむつも脱ぎ捨てられ、シーツの上はウンチまみれ! 何が起こったのか理解できず、私は呆然とする。当の本人はスッキリした顔で熟睡。それからはどうやって片づけたのか、覚えていない。トイレ用の消臭剤を撒いてやっと横になったが、目が冴えてしまい朝まで眠れなかった。

しっかり者の母さんが、赤ちゃんに戻ってしまった……。でも、赤ちゃんはおむつを自分で外さないよね。

介護施設では、おむつ外し対策として、カギ付きのパジャマを着せるか、両手にミトンをはめていた。翌日ネットで調べると、ありました、アイデア商品。ロンパース式のシャツ。彼女を拘束せずにすむ、救いの神。

あとは夜中に催されないように、薬でコントロールする。おむつとパッドの当て方を工夫し、漏らさない、広げない、散らさないを心がける。ウンチとの闘いはまだまだ続く。

元気だったころの彼女からは想像できない今の姿だ。いつもお洒落で、社交的な人だった。派手なヒョウ柄の高級ブランド服がお気に入り。80過ぎまで、国内外のツアーに一人で参加していたっけ。

ところが、認知症の症状が出てからは、いつも同じ服を着て、下着が臭い始めても替えようとしなくなった。こんな状況にあっても、彼女は「まだ死にたくない」「死ぬのはまだ早い」と豪語している。

老いることは、女性でなくなってしまうこと? 羞恥心を失っていくこと? 近い将来の自分の姿を見ているようで切ない。自分だったら、ものごとが理解できて、自力でトイレに行けるうちに、お迎えが来てほしい──。

私にできるのは、母においしくご飯を食べてもらって、清潔に出してもらい、周りを汚されないようにすることだけ。

悪魔がおりてきても、母は母なのだ。彼女より先に逝かないように、頑張らなくてはいけない。


※婦人公論では「読者体験手記」を随時募集しています。

現在募集中のテーマはこちら

アンケート・投稿欄へ