見附正康《無題》2019 オオタファインアーツ
(C)Masayasu Mitsuke ; Courtesy of Ota Fine Arts

 

日本の伝統技術を究極の芸術に高めて

映像やデジタル技術を駆使した表現が進む現代アートシーンだが、その一方で、日本にはなお、神業ともいうべき技術の世界がある。そんな現代日本における工芸美の数々を、1970年以降に生まれた12名の作家の作品で紹介する。

「和巧絶佳(わこうぜっか)」とは、日本の伝統美を追い求める「和」、手わざの極致に挑む「巧」、素材の可能性を探る「絶佳」という、3つの傾向を表した造語。「令和の超絶技巧展」といったところだろう。

たとえば、地元石川県で九谷焼を学んだ見附(みつけ)正康は、赤の顔料で髪の毛のように細い線の文様を描く「赤絵細描(あかえさいびょう)」を習得。《無題》は、この技法で幾何学的な文様が縦横無尽に大皿の表面を覆うシリーズの1枚で、赤からピンクのグラデーションも華やかな作品だ。それぞれの作品をよく見ると、海外のゴシック装飾のような、きらびやかでかわいらしいパターンが潜んでいたりするのも面白い。

また何度見ても驚くのが、《四つの桶》で、桶の中をスイスイと泳ぐ深堀隆介(ふかほりりゅうすけ)の金魚である。本物とみまがうこの金魚たちは立体作品かと思いきや、透明樹脂にアクリル絵の具を用いて描かれた「絵」。自ら編み出したこの技法で、深堀は頭の中の金魚のイメージを現実のものにするのである。

その他、『源氏物語』など王朝文学の世界観を繊細な截金(きりかね)に表現しガラスの中に封じ込めた、山本茜の截金ガラスや、透光性のある文様を施す蛍手(ほたるで)により、器自体が白く発光しているような作品をつくる新里明士(にいさとあきお)の《光器》など、「工芸美の極み」といっても過言ではない作品がズラリと並ぶ。

素材や技法と真摯に向き合う彼らの姿は、アーティストというより求道者のように見えてくる。

深堀隆介《四つの桶》2009 台湾南投毓繡美術館、台湾

 

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懐かしいおばけに会える

「おばけのせかいへとんでいけ」と、夜中に遊ぶ子がおばけに連れ去られてしまう『ねないこだれだ』や、「いやだ」を繰り返すルルちゃんに、お母さんもお日様も、保育園にはいていく靴までが怒り顔になる『いやだいやだ』。

数々の代表作を持つ絵本作家せなけいこ(1931-)の作品展である。読者のなかにも、子どもの時によく読んでもらった、あるいは、自分の子どもや孫に読み聞かせたなど、懐かしく思い出す方は多いに違いない。

絵本作家デビュー50周年を記念して開催中の本展では、「いやだいやだの絵本」シリーズ4作品全ページをはじめ、数々の名作原画約300枚を一挙公開。「怖いけれどもかわいい」と評判の『ねないこだれだ』に代表される、貼り絵による独特なテクスチャーなど、出版物では見ることのできない部分を、ぜひ間近でご覧いただきたい。

また紙芝居やフィルムに光を当てて投影する「幻燈」の仕事をしていたという、せなの知られざるデビュー前の歩みなども、資料とともに紹介する。

『ねないこだれだ』(1969年、福音館書店)CKeiko Sena

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陶器もおもちゃも
多様なデザインの軌跡

2002年以来、チェコの歴史や文化をさまざまな角度から紹介してきた、神奈川県立近代美術館。本展は、220点以上の作品でチェコのデザイン史を総合的に紹介する日本初の展覧会だ。

お馴染みのアルフォンス・ミュシャのポスター、第二次世界大戦後に人気を博したヤロスラフ・イェジェクの斬新でモダンな陶器、また愛らしくぬくもりのあるおもちゃやアニメーションの世界……。多様なデザインが楽しめる。

ヤロスラフ・イェジェクカルロヴィ・ヴァリ磁器社レソフ開発工場コーヒーセット《ダグマル》1960年チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 Collection of The Museum of Decorative Arts in Prague