イラスト:吉泉ゆう子
あなたには、「友人」と呼べる異性はいますか。結婚後は交流が途絶してしまうケースも多いようですが、女友達とはまた違った、味わい深い関係性を築いている4人の女性たちに話を聞きました。今回紹介するのは教員をしているユキさんのケースです。(イラスト=吉泉ゆう子)

帰郷した元生徒会長と20年ぶりに再会

関西で教員をしているユキさん(42歳、仮名=以下同)はこの春、長年の夢だった「朗読劇の公演」を実現させた。

「3年前に新井くんが地元に戻って来てくれたから、ここまで漕ぎつけられたんだと思います。私だけではとても無理でした」

ユキさんが新井くんと呼ぶのは、高校時代の同級生で、演劇部の仲間。生徒会長を務め、成績も学年トップだった新井さんは、東京の超難関国立大学を出てプロの劇団に入った。

一方、ユキさんは大学院まで進んで宮沢賢治の研究に打ち込んだあと、地元で就職。早くに結婚し、仕事や子育てに追われて、新井さんと会うこともなくなっていた。

いつかは賢治の作品で朗読会を開きたい、と漠然と考えていたユキさん。娘が高校生になり、子育ても少し落ち着いたところで一念発起し、少しずつメンバーを集めていったが、「企画立案から取りまとめまで運営をひとりで進めるのは自信がなくて。そのとき、新井くんのことがふっと浮かんだんです」。

ちょうど新井さんから、「家族の都合で帰郷した」と連絡がきていた。20年ぶりに会って話すと、聡明で人当たりがよく、誠実にこちらの話に耳を傾ける人柄は昔のままだった。

劇団を退団後、一般企業で働くかたわら、自らも芝居のワークショップなどを開催していた新井さんは、ユキさんの朗読ユニットへの協力をふたつ返事で約束。企画は一気に実現へ向けて動き出した。