イラスト:若林夏
赤ん坊からお年寄りまで、一律同額が配られた特別定額給付金。使い方はそれぞれ「自由」なはずだけれど……(「読者体験手記」より)

金遣いが荒く好き勝手だった夫もすっかりおとなしくなった?

国からの特別定額給付金がわが家にも振り込まれた。夫と私の2人で20万円だ。私は使い道を心に決めていたのだが──。

夫は年金生活者だ。60歳の時に糖尿病合併症で目の網膜や腎臓が悪くなり、3度の入退院を繰り返して、その後は会社を退職。今は自宅療養をしている。代わって私が家計を支えるべく、フルタイムのパートで販売の仕事をしてきた。

毎朝、私は仕事に行く前に、夫の朝昼晩の食事を作る。カロリー、タンパク質、塩分などを素人ながら計算しているので、1時間半はかかる。8年間がんばったおかげか、今のところ人工透析は受けずにすんでいる。

自宅療養を始めた当初、夫は私が仕事に出かけていると、菓子箱から好き勝手に食べ、夜は晩酌までしていた。何度注意をしても聞く耳を持たず。「たいしたことないのに騒ぎやがって」という様子だった。

そんな生活を続けた結果、「目が見えない!」と騒ぐではないか。病院で診てもらうと、あらゆる数値が悪くなっていて、手術・入院・食事療法……さらに2回の入院を繰り返したわけだ。

思い起こせば結婚した当初から夫は金遣いが荒く、賭け事が大好き。あれば使ってしまうという生活は、老いても病気になっても変わらなかった。それがここ数年はずいぶんおとなしい。腎臓の数値が悪く、合併症が始まり、神経障害が起き、以前のように力も出なくなった。

発症からの8年は、長いようであっという間にあわただしく過ぎていった。私も体力が落ちてきて、フルタイムの仕事を終えて家に戻った後、さらに続く家事は負担に感じる。夕飯を食べ、洗い物、洗濯物をたたみ、布団を敷いて風呂の着替えの用意、風呂を洗って沸かし、その間に明朝の食事の下準備、風呂が沸けば夫を入れ、後から自分が入り、洗濯をして部屋に干し、あっという間に夜10時過ぎ。それからが束の間の、自分のための1時間である。

ふと、「これが私の人生か」と思うと涙が出る。健康に産んでくれた亡き両親に感謝をしながら眠りにつく。

そんな夫と、給付金のことで話し合った。私としては今一番苦しいであろう飲食業に携わる息子を、少しでも助けたいと思っていた。息子に頼まれたりせがまれたりしたわけではないけれど……。そう話すと、夫も納得し了解してくれた。そう私は思っていた。