スペインの現代写実絵画 ─MEAM

5月17日~9月1日
ホキ美術館
☎043・205・1500 ※以降、佐賀に巡回

「本物そっくり」という
超絶技巧を披露するだけではない

2010年、千葉市緑区の昭和の森近くにオープンしたホキ美術館。80mの長い廊下に、写真とみまがうリアルな絵画が並ぶ同館は、我が国初の写実絵画専門ミュージアムである。通常は日本人画家によるコレクション展示を行っているが、今回初めて海外はスペインの写実画家たちの作品59点を紹介する。

ゴルチョ《眠らない肖像》2007年 MEAM

 

意外なことに、対象を細密に描く写実絵画がさかんな国は、日本とスペインだけなのだそう。スペインでその中心となっているのが、バルセロナのヨーロッパ近代美術館(MEAM)である。本展には、このMEAMのコレクションより、30代から70代までのスペイン人画家たちの作品が集結する。

重鎮は、1980年前後よりスペインのリアリズム絵画を牽引してきた、今年70歳になるゴルチョである。彼の《眠らない肖像》は、縦約120×横約170cmの大画面に、ゴロリと描かれた老人の頭部の描写が衝撃的だ。深いしわが刻まれた皮膚や、ごわごわした髪の毛などのリアルな描写はもちろんのこと、物言いたげにこちらを見つめる老人の表情が印象深い。描かれた両目の部分に縦に走るキャンバスの亀裂が、観る者に哲学的な思いを喚起させる。

ミゲル・アンヘル・モヤ《マーメイド(人魚)》2016年 MEAM

 

戸棚に整然と並ぶホルマリン漬けの標本を描いたミゲル・アンへル・モヤの《マーメイド(人魚)》は、その透徹したリアリズムが印象的だ。17世紀の画家・スルバランなどの静謐な静物画の伝統を感じさせる。さすがベラスケスやゴヤ、ピカソを生んだ芸術大国スペイン! 現代作家による写実絵画も、単に「本物そっくり」という超絶技巧を披露するだけでなく、自国の芸術の伝統や深い思想性につながっていることがよくわかる。

 

これぞ黄金の国・日本
金屛風展
—狩野派・長谷川派・琳派など—

~9月29日
岡田美術館
☎0460・87・3931

豪華絢爛な日本の美

中国で生まれ、日本で独自の発展を遂げた、折りたたむことのできる調度品「屛風」。そのなかでも黄金で加飾した光り輝く金屛風は、日本からアジアやヨーロッパの王侯貴族への豪華な贈答品として珍重された。本展は、この日本ならではの調度である金屛風を、桃山時代から昭和初期まで、狩野派、長谷川派、琳派(りんぱ)などの作品約30点で紹介する豪華絢爛な特別展。

桃山時代〜江戸時代前期の古い屛風は、絵師の特定が難しいものも多いが、顧客に人気のあったスタンダードなデザインがうかがえる。たとえば《柳橋(りゅうきょう)水車図屛風》は、桃山時代の巨匠・長谷川等伯(とうはく)が描いて以来、長谷川派を中心に受け継がれた意匠だ。黄金に輝く橋のたもとに柳が揺れ、水車が回る。そして雲には、金箔が細かく切って貼られ、文様を浮かび上がらせる「切箔(きりはく)」という技法が採用されている。

このように、金屛風の黄金に豊かな表情を与えるさまざまな技法を紹介しているのも本展の特徴。ここで得た知識は、展覧会や旅行先で金屛風を観る時にかなり役に立ちそうだ。

《柳橋水車図屛風》(左隻部分)江戸時代前期 岡田美術館蔵 展示期間:〜7月4日

 

キスリング展
エコール・ド・パリの夢

~7月7日
東京都庭園美術館
☎03・5777・8600(ハロー ダイヤル)

「モンパルナスのプリンス」が
日本で12年ぶりに

1920〜30年代、「モンパルナスのプリンス」と呼ばれ、一世を風靡したエコール・ド・パリの画家キスリング(1891-1953)。ユダヤ人であったことから第二次世界大戦中はアメリカでの亡命生活を余儀なくされたものの、画家としての人生を全うした彼の、日本国内では12年ぶりとなる個展である。見どころのひとつは肖像画。たとえば《ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)》は、フランスの女性小説家コレットの娘を描く。憂いのある表情や輝く色彩などが魅力的だ。

キスリング《ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)》1932-33年カンティーニ美術館、マルセイユ©MuséeCantini,Marseille