イラスト:マルー
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。今回のテーマは、日本で最初の雑誌図書館「大宅壮一文庫」にまつわるお話です。

「パトロネージュ参加支援のお願い」と題した封書が届いたのは、2019年の夏のことである。差出人は「大宅壮一文庫」。

日本で最初の雑誌図書館として1971年に東京・世田谷区八幡山の住宅地の一角に創設された大宅壮一文庫が、経営難に陥って存続の危機に瀕している。明治時代からのおよそ1万2600種類の雑誌、80万冊を所蔵し、最盛期には月平均2300人の利用者を誇る人気の文庫だったが、インターネットの普及に伴い利用者の数が激減し、運営が難しくなっているという。

ついては個人や企業から寄付金を募って維持をはかろうと、新たな支援制度を始めることになった。是非とも呼びかけ人就任と寄付に協力いただきたいと、そんな主旨である。

これぐらいの歳(って、つまり高齢者所属)になると、さまざまな団体、協会などから「寄付」のお願いを受けることがある。どちら様も大変なのだろうと拝察しつつ、すべてのご期待に添うことはできない。ごめんなさいと失礼するか、あるいは微々たる金額で礼を尽くしたつもりになることはたびたびだ。が、こと大宅文庫となれば話は別である。

大宅文庫に私が今までどれほどお世話になってきたことか。この30年あまりの間、私の家に大宅文庫のコピー資料がなかった日は一日たりともない。

よし、奮発するぞ!

かけ声は高らかに、結局、「微々たる」に少し追加したぐらいの金額を申込用紙に書き込んで返送した。