ずっと私を見てくれていた人

今の夫と私は小学校時代からの剣道仲間。中学の時も、初段の試験を仲良く受験した。高校生になり、彼は地元で一番の進学校、私は女子校へ。高校最後の学園祭で、夫の親友から「あいつのために頼む」とお願いされ、彼の高校でフォークダンスを一緒に踊った。

卒業後は、お互い進学のために上京。最初の冬に、夫の学生寮の先輩から「寮の忘年会に、あいつのために参加してくれ」と頼まれ、初めて一緒にお酒を飲んだ。そんな展開のたびに、手のひとつも握ってこない彼の純情さを、私は好ましく思っていた。

私はこれまで、今の夫から3度プロポーズされている。1度目は、彼が第一志望の大学に入学した時。私は「まだ付き合ってもいないのに」と答えた。普通ならここでさらに迫るものだが、彼は具体的な行動には出ない。私から迫ることもできなかった。結局、月に1、2回会ってお茶を飲む、映画を見る、というような友達付き合いが続いた。

2度目は彼が大学4年の春。私は専門学校を卒業して田舎の親元に戻っていた。東京で就職するという彼に、私の答えは「養子をもらわなければいけないの。東京で暮らすことはできない」。彼は「そうか」と言って去っていった。「自分が養子に入るから」と言ってくれる男性は何人かいたが、夫は違ったのだ。「その程度の気持ちしかないんだ」と寂しかった。でも、仕方ない。彼はエリート。田舎に埋もれるのは惜しいだろう。

一緒になってから聞けば、当時の夫は、「断られた」ことで頭がいっぱいになり、その後そのまま東北へ旅に出たのだという。また何かして私に嫌われたら2度と会ってもらえなくなると不安だったらしい。お互いに若くて純情だったのだ。