
ヤマハギ・ススキ・葛・撫子・オミナエシ・藤袴・キキョウ
秋の七草
「秋の七草」は、奈良時代に編纂された『万葉集』に、万葉の歌人といわれる山上憶良(やまのうえのおくら)により、
「秋の野に 咲きたる花を 指折(およびお)り かき数ふれば 七種(くさ)の花」
に続いて詠まれています。その歌が、
「萩の花 尾花葛花(おばなくずばな) 撫子(瞿麦)の花 女郎花また藤袴 朝顔の花」
です。萩はヤマハギ、尾花はススキ、朝顔はキキョウを指すといわれます。
後者のほうは、短歌の五・七・五・七・七から考えると、えらく字余りと思われるかもしれません。しかし、これは、五・七・七・五・七・七を繰り返す「旋頭歌(せどうか)」という和歌の一種であり、字余りではありません。
『万葉集』には、ハギが約140首でもっとも多く、ススキ46首、ナデシコ26首、クズ18首、オミナエシ14首、詠まれています。「秋の七草」は、眺めたり歌に詠まれたりする《愛めでる植物》ですが、「春の七草」には、七草粥に使われる食用の植物が選ばれています。「歴史的に、どちらが先に決まったのか」との素朴な疑問がもたれます。
「春の七草」は、四辻善成(よつつじよしなり)が室町時代に著わした、源氏物語の注釈書といわれる『河海抄(かかいしょう)』に
「芹なづな 御形はこべら 仏の座 すずなすずしろ これぞ七草」
として、初めて紹介されています。
それに対し、「秋の七草」は、奈良時代に編纂された『万葉集』に詠まれています。ですから、「秋の七草」のほうが、春の七草より先に決っていたことになります。
季節をいうときには、普通には、春、夏、秋、冬の順であるため、「春の七草」のほうが先のように思われがちですが、「秋の七草」のほうが先なのです。