運転はいつもあたしだった。

小さいのに重たくて、アクセルを踏めば弾丸のように飛び出すし、どんな長い山道でも(娘たちのところに行くとき、ロサンジェルスの北端は長い長い山道が続いた)安定してつっ走れるし、市街地では直角にまがれるし、あたしは夫を乗せて、それから夫がいなくなって犬たちだけになって、走りまわった。

MINIの運転はいつも楽しかった。

夫が死んだ二年後に日本に帰ってきたのだった。そのとき友人たちから買い取ろうかという話があった。でも断った。夫の残り香が漂っている気がした。そのまま置いてきて、今はカノコが乗っている。

そういうわけだ。MINIには思い出も思い入れもある。感傷もありすぎる。

今またMINIを買って、楽しい運転を思いっきり……と思ってふと考えた。どこを誰と走るんだろう。お客が来たら阿蘇、たまに天草。あとは市内のおつかいだ。前みたいに数百キロの長距離は走らない。同乗するクレイマーは、MINIだろうがアルトだろうが、乗ってどこかに行かれりゃいい。

カリフォルニアでは、MINIの維持費がやたら高かった。トヨタの比じゃなかった。日本では維持費以前に、軽と普通車の税金の違い、車検の違いがある。ちょっと計算しただけでも一年間に5、6万円の違いである。5、6万、本や植物がだいぶ買える。

早稲田もあと半年、やめたら定収入がなくなる。あたしはどんどん老いていく。

なんてことをつらつらと考えたあげくに、あたしはSS評価の、故障の少ないはずの、維持費が安くて、サポカー機能とナビ機能とバックカメラのついたアルトを選んだのだった。あと半年で早稲田の任期が終わるという今、車を買うということは(買わざるをえなかったんだが)もう少し日本にいようという決意かなとも考えた。