〈女性の職場〉へのこだわりは、大学入学まで小中高と女子校育ちであったことも関係していたかもしれない。上品で、クリッとした瞳をまっすぐに向け、きれいな言葉を話す彼女は、26歳で結婚、28歳で出産、育休を1年とって29歳で復職。その後チーフパーサーに昇格、第二子も出産、それでも国際線に乗り続け……と、多くの女性があこがれたCAキャリア+結婚&出産も、という経歴。けれども義父がガンになったことをきっかけに航空会社を32歳で退社、介護や子育てがやや落ち着いた30代後半からは紆余曲折の、次なる職さがし・自分さがしの旅がはじまった。

「一回仕事をやめてみると、まだまだ仕事をしたい自分に気がついた。だけど夫に言われたのです。
『再就職? ファックス一枚送れないくせに、なにが再就職だ?』
カチンときつつも、現実はそのとおりだな……CAはつぶしのきかない仕事、私はそれをやっていたんだな、と。そう、CAってオフィスワークを知らないのです」

「編集者もつぶしのきかない仕事なんですよー」と、取材に同席している編集者さんが口をはさむ。

「それでも一本の道でがんばっている人たちは、本当にすごいなって。自分が元同僚や、バリバリ働き続けている友達にいまから追いつけるか?それはできない。かといって、いいお母さんを──たとえばおうちでケーキ焼いて子どもを待って、ごはんはぜんぶ手作りで……なんていうお母さんも、私にはできない。私はどっちつかず。そんな自分を変えたかったけれど、変えられない。出どころはCA、ファックス一枚送れないって見られている自分がいて──」

私は前の職歴で勝負しない、そう思って彼女は、あがいた。その気持ち、わかる。「元○○」は、いやだった。