「いまではだいぶ吹っ切れたんですけど10年くらい前までは、『あ、CAさんだったんですねっ?』とかって……ドラマの影響かもしれませんが、『なんかいいもん食べてェ、いいもん持ってェ、華やかだったでしょう〜』なんて言われて。たしかにそうだったかもしれないけれど、私はそれで生きていくつもりはない! とヘンに肩肘張っているところもありました」

勉強するのは嫌いじゃないというユキさん、簿記の資格を取得して、ハローワークへ行ってみた。そのとき40歳くらい。

ユキさん「会計事務所の仕事とか、ないですか?」

ハローワーク「……いやあなたねえ、それはいまさらないですよー。エアラインスクール(のマナー講師)とかなら紹介できなくもないけど」

ユ「元CAは捨てて、ちがうフィールドで仕事をしたいのですが─だめでしょうか……」

ハ「ムリムリ、一般事務なんてムリ」

ほかの仕事をはじめられるほどに、自分自身をとことん追い込めてはいなかったのだと、ユキさんは当時の自分を振り返る。その後は〈元の自分〉を受け入れつつ次の場所を模索して10年が経ち、彼女は50代を迎えた。現在はマナー講師として働いている。

「あがき続けているんですけどね。元CAじゃないところで勝負できないかなって、いまだに。それでもまあ、あるものをムダにしないほうがいい、マナー講師としての幅を広げていこうと、コツコツ資格を取ったり勉強したりして……」

あんがい「彼女」はこの先、最初の会社に戻るかも……? 私はユキさんの話を聞いて、思いついた。戻らないまでも、近い企業で働くような気がする。それを告げるとユキさんは、「……だといいですけどネ……」と短く答えて微笑んだ。その美しい笑顔は私の〈あこがれのスチュワーデス〉だった。
つづく