「焼鳥5本丼」1900円。左から山葵で食べるささみ、塩味の団子、タレ焼きの腿肉、塩味の皮身に奥がタレ味の肝類など。肝の串には、レバーやハツを刺してある。ぎっしりと並ぶ焼鳥の下に敷かれたご飯は、飛驒高山の名人が作るコシヒカリ。戦後、営業再開した頃から使い続けるタレが染みたご飯もまた美味

創業99年、装いも新たに老舗の味を

大正10年創業。日本の焼鳥史に残る老舗「伊勢廣京橋本店」が、この10月、旧店舗の真向かいに、装いも新たにオープンした。店内は路地の風景に昭和情緒を感じさせる1階から、旧店舗の趣を残す2階、掘り炬燵式の四阿(あずまや)や桟敷席などの個室のある3階の3部構成。意匠の異なる空間は、用途に応じて使い分けできそうだ。

店は一新しても、メニューは昼夜ともに従来通り。「まったく変えていません」。三代目の星野雅信さんのキッパリとした言葉にも老舗の矜恃が感じられる。勤続46年以上の職人が3人もいると聞けば、それも納得だ。火力の強い姥目樫(うばめがし)の備長炭で、ベテランの職人が焼きあげる焼鳥は、餌と飼育日数にこだわったメスだけを用いている。

「焼鳥6本定食」2200円。左からささみ、砂肝、皮身、団子、葱巻に一番右は腿肉。スライスした腿肉で千住ねぎを巻いた葱巻は、昭和37年に先代が考案した一品。共にお新香と鶏スープがつく。ほかに「焼鳥5本定食」1900円など

 

夜はコースのみだが、ランチなら丼や定食で気軽に楽しめる。天城の清流に育まれた山葵が風味を高めるささみ、年季の入ったタレで味わう腿肉といずれ劣らぬ秀逸さだが、中でも逸品は団子。つなぎを一切使わず麻の実をブレンドしたそれは、歯応えも小気味よく、口中でホロッと解けるそばから溢れ出る肉汁が命。運ばれてきたら、熱々のまま真っ先に頰張ることをお勧めしたい。その豊潤さにきっと目を見張るはずだ。