絵:石黒亜矢子
詩人の伊藤比呂美さんが『婦人公論』で連載している「ショローの女」。夫が亡くなり、娘たちも独立、そうして伊藤さんは20年暮らしたアメリカから日本に戻ってきました。新型コロナウィルスの流行拡大以降、ほほ熊本の自宅で過ごす伊藤さんに、知り合いから子猫が生まれたとの知らせが入ります。一晩寝て起きて、伊藤さんは知り合いのもとへ。連れて帰ってきたのはトラ柄の二匹の子猫でした

もういっそ「猫とクレイマーとショローの女」とか改題し(はい、谷崎潤一郎リスペクトです)、猫エッセイにしてしまおうと編集のKさんに提案したが止められた。今回は前回の続きなので、ゆるしてください。

そうなのだ、猫が来て十日目、あたしはすごいものを見ちゃったのだった。

十日目になるまで、クレイマーはあんまりしあわせそうに見えなかった。

猫のお母さんに出合い頭の一撃で殴られてからというもの、それまで追いかける対象でしかなかった猫にも心があり、攻撃心もあり、その爪はとても痛いということを学んだ。そしたらそれらが家の中に住み着き、そればかりか、おかーさんが保護的な態度を取ってるじゃないかということもわかってきた。かしこい犬なのだ。それでなるたけ目を合わせないようにひっそりと暮らそうとしていたが、猫たちは自由に生き、好きなところで眠り、好きなところを歩き、クレイマーの場所へもノシてきたのだった。

なるたけ目を合わせないようにひっそりというのは、もともとクレイマーはひっそりしてる方だったから、猫のせいなのか、通常どおりなのか、よくわからなかった。