平成バブル期の経済事件は、すべていまに通じているのか。あのとき曖昧な幕引きがされなければ、今日の国会ではぜんぜんちがうことをやっていただろう。じつはこうしてだらだらと、私たちはいまだあのバブルを引きずっているのだ。

にしても、政治がよくならないのは政治家のせい? そうだろうか?

たとえばある保守系議員は、秘書を20人置いて、選挙区のあちこちに事務所を持ち、そこを維持するのに年間1億円以上を使うという話を本で読んだ。

たくさんの人を使わなくては、仕事がまわらない政治家たち。人を使えばその人間の人生まるごとついてくる。持てば持つほどお金も手間も、責任も重くかかる。

シホさん(57)は、国会議員公設秘書の経験をもつ。現在は会社経営者である「彼女」にそのあたりの話を投げかけてみると……。

「国会議員も秘書も給料高いって言われるけれど、私は安いと思っているの。たとえば政策秘書で年収800万、それで24時間365日、国会議員と働くのよ。眠る時間はちょっとで、その時間にも携帯電話を最大音量にして、それとスケジュール帳を枕元に置いて、毎日寝るの。じゃないと仕事にならない。秘書って議員のプライベートも管理するから、休みなく議員と一緒で、週末も議員と地元に帰る。お盆もお正月も地元まわるでしょ、ぜんぜん休みないのよ。だから800万でも優秀な人が来ない。来てもすぐやめちゃうの、ばからしくて。

だから、ここはもう2000万にしないとダメだと私は思ってる。質の高い人に仕事してもらわないと、この国はよくならない。優秀な人が競い合って、ほんとに優秀な人が当選して、秘書もいい人がくる。で、議員の仕事もはかどる……というふうに」

――そうですね、いい人にたくさん……にしても国会議員と24時間365日じゃあ。

「あの人たち人間じゃないからね、コッカイギインっていう生き物だから。もう、そう思わなくちゃ、やってられない。同じ秘書からのパワハラもあったよ。私はトイレ行って2回血を吐いた。先輩秘書、ほんとうに怖かったから……」

枕元に携帯とスケジュール帳……私もそうだったが、血は吐かなかった。

「議員ってね、選挙落ちちゃったらみんな、ただのおっさんおばさん。そうした危機にいつも晒されている。ひじょうにかわいそうになるよ。落差がひどい。収入ゼロになるし、まわりからすごく叱られるの、人紹介したのになんだよだの恥かいただの言われて。まわりから人がバアーッといなくなる」

ポンポン弾き出される言葉は明るく軽やかなのに、それらはシホさんの濃密な経験にすべて裏打ちされているようで、いちいち重い。

ところでその後、ボスの体調に異変はなかった。むしろますます万全と思われた。
ボスは編集長を信頼のおける後輩に任せ、出世する。ボスは雑誌編集長でなくなり、もっとえらい人になった。

リステリンは飲んでいなかったようだ。(つづく