イラスト:飯田淳

 

専業主婦だったシホさんが挑戦した、化粧品販売業。
そのビジネスもまた泡となってはじけ、
離婚後の生活は厳しくなった。そんなある日、
シホさんも「ボス」と出会うことになる

第10回 正社員になる

ある日、ボスとロビン(新編集長)が連れ立って、私の席のほうへやってきた。

いったい何事かと背筋をのばすと、二人は私に向かってこう言った。

「社員にするから」

私は雑誌編集部に契約社員として勤めていた。転職して数年が経過、仕事に没頭していた私は満ち足りて、待遇のことは考えずに生きていた。

「は? ……はぁ」

「じゃ、これから社長のところへ行ってくる」

そう言って、ボスとロビンは上階にある社長室へ向かったようだった。

あのとき私はもっと喜ぶべきだったかもしれない。

いまにして思えば、契約社員と正社員は大違いだ。

しばらく経って二人はふたたび私のところへ戻り、
「社員だから」
とだけ言い、すぐに去っていった。

「社員だって」
両親にそう報告すると、
「そりゃ、けっこうですな」
と父は言った。母も、
「よかったやないの」

どうやら二人とも(大阪弁)とても喜んでくれたようなので、じょじょに実感が湧いてきた。

そうか、これはきっとすごいことなんだな……。

〈社員にする〉ということは、ここをやめるなよ、ということだ。

だからボス&ロビンの愛と受け止めていい。私の日頃のがんばりを、彼らはずっと見てくれていた。そして認めた。「これからもよろしく」、そう言ってくれている――。

「はい、一生ついていきます」

口には出さなかったが、お嫁に行くくらいの大イベントだったのかもしれない。