仕事で自信を得るとともに、独り暮らしを始めた私。
国会議員の秘書だったシホさんの場合は、
実家を出たい一心で結婚に踏み切ったという。
しかし、その生活は苦しいもので──

第9回 家出と結婚

ボスの席には、新しい編集長が座った。

その人物に私はかねてより親しみを持っていた。というのも、私が編集部に入ってすぐに命を受けた海外取材で(第5回)、ともにカナダへ出かけて以来、新人の私のお目付け役として、近くから遠くから見てくれていた先輩だった。おそらくこの人がいなければ、私がその後、K書店を辞してボスの独立についていくという決断も、なかっただろうと思う。

新編集長には当時、ロビンなんとかという外国の俳優に似ていることから、ロビンちゃんとのあだ名がついていた。本稿でも便宜上、これを使わせていただく。

ロビンは私に、安心して仕事をしろと言ってくれた。何があってもちゃんと助けるから自信を持ってどこへでも行け、きみにこの仕事は向いている、そうハッキリと私に言ってくれた。

ロビンがやってきて以降、私の編集活動は活発化した。

自分と同じ時期に業界に入った若い仲間と、つぎつぎ出会った。レコード会社や映画会社、芸能事務所で働く人や新人の表現者たち、そのアシスタント……そうした社外の駆け出したちと会い、一緒に何かやろうと盛り上がった。

〈いまは辛くとも、これからきっといいことがたくさん起こる〉

それぞれの場所で、上司や先輩に厳しく鍛えられている同志たちとの関係は、お互いの成長とともに、仕事へと結実させることができるようになっていく。仕事の面白さはそこからだったが、こうしたこともいまだからわかることで、あのときにはわかっていない。

胸を張って私が仕事に励めるようになるのに、そう時間はかからなかった。

独り暮らしを始めたのも、たしかこの頃だったと思う。

サラリーマンと専業主婦というカップルの一人娘として、東京郊外の町で育った私の、生まれて初めての大冒険……と言いたいところだが、そんなドラマティックなものではなかった。ひたすら仕事が忙しく、さすがに通勤が負担になって、もうやむなし、という感じだった。

ある夜、母の運転で家を出た。

最小限の寝具と衣類と食器、をクルマのトランクに積んで。