シクラメン!

花の姿は、まるで「かがり火」
クリスマスやお正月が近づくと、あちこちの園芸店や花屋さんの店頭に、シクラメンの鉢植えが並びます。「クリスマス・フラワー」とよばれるポインセチアのあと、建物や室内に飾られます。この花は「鉢植えの王様」といわれ、花の色は、赤を代表に、白、ピンクなど色とりどりです。
また、咲いている期間が長く、お正月を過ぎても、寒さを忘れさせるように冬を明るく飾る花なので「冬の花の女王」とよばれることもあります。
この植物の花びらは、5枚あります。そのすべてが下から上に向かって反そり返って伸びています。そのような真っ赤な花びらの姿は、まるでかがり火が燃え上がる炎のように見えます。そのため、この植物の別名は、「カガリビバナ(篝火花)」なのです。
ということは、この植物の花は、すべての花がうつむいて咲いていることになります。この植物の花をよく見ると、葉の中から上に伸びだした花茎は花の下で180度屈曲し、花は下向きに咲いているのです。
そのため、上から花の中心を見ようとしても、メシベやオシベを見ることはできません。上から見ると、花の後ろ姿と反り返って上に伸びている花びらが見えるだけです。
「なぜ、花が下を向いて咲くのか」と不思議がられます。その理由について、「この植物の原産地である地中海沿岸地方では、この植物の花が咲く冬には、雨が多く降ります。そのため、花が上向きに咲いていると、雨が花の中にたまり、花粉が雨に濡れて受粉できなくなってしまいます。そのため、花は下を向いて咲くのです」と説明されます。
そう言われると、この花だけでなく、ホタルブクロ、アセビなど、雨がたまりそうな花は、下向きに咲くものが多いのです。
一方、上向きに花を咲かせる植物の多くは、雨が降っているときには、花を閉じているものが多いのです。カタバミ、ムラサキカタバミ、マツバボタン、チューリップなどです。いずれも、花の中に水がたまるのを避けているのです。