イラスト:飯田淳

 

入社以来、一社に勤務し続けるケイさんは、
自分は「会社と結婚」したも同然、と語る。
会社の変化に合わせて働き方を変えてきた世代として、
私とケイさんはバブル時代の労働に思いを馳せる

第12回 会社と結婚

「ボスについていくのがスジだ」

両親はそう言った。ボスを紹介してくれた、Tさんはじめ周囲の作家も、同じ意見だった。それだけでない、担当していたミュージシャンからプロレスラーまで、退社に好意的だったと思う。

ところが肝心の本人(私)が、モタモタした。

ボスについていきたくないわけがない。

が、雑誌編集者をやめたくもない。

正社員になったばかりでもある。

結婚生活にたとえるならば私は新婚? すくなくとも婚約中ではなかったか。こういう場合、どうなのだろう? 別居もしくは海外移住……いや、もっと深刻な……、亡命?

そんななかで私の背中を押した人がいた。ロビンである。

すでにボスとの独立――つまり新会社設立に向けて着々と動いていたロビンは私にこう言った。

「きみがここで学ぶことは、もうない」

そのひとことが決定打となった。

あの場所で私に学ぶことがもうなかったのではなく、そう言ったのがロビンだからだ。この仕事の才能が私にあると、初めてそうハッキリ認めてくれた人だった。

そんなわけで、K書店と婚約中だった私の正式な嫁ぎ先は、ボスが社長の新会社となった。