イラスト:飯田淳

 

よく遊び、よく働く。女性もそれが当然、という時代へと
日本は突入した。ただ、男性と肩を並べて働いた確かな実績がある
にもかかわらず、50歳を目前に理不尽な異動を命じられるのも、
この世代の女性たちが味わってきた苦い経験だ―

第13回 政権交代

人気タレントのKさんと、テレビ局で会うことになった1993年夏。

ドラマ撮影中の楽屋をノックして顔を出すと、大きな鏡越しに私をみとめてこう言った。

「ミルちゃん、これからいい時代になるかも」

あのとき彼女は何をもってしてそう言ったのか?

それは〈政権交代〉。

――日本で政変が起こると、Kさんは知っていたのだろうか。

その年の8月9日、自民党が結党以来はじめて下野する。

細川護熙氏を首相とする非自民連立政権が発足し、それまで40年近く、単独で政権の座についてきた自民党が、負けたのだ。

「五五年体制」とよばれた、自民党vs.社会党の政治体制の終わり。

米ソ冷戦の終焉に追随するかのようなバブル経済の崩壊、汚職などによる政治不信により、〈対決〉を軸にしたやり方はもう古い、日本の政治も新時代へという期待を、多くの国民が抱いた。

Kさんも私も、20代の半ばだった。呑気に大学を卒業して社会に出た私と違い、その何年も前からきったはったの芸能界で揉まれていたKさんは、ヒラヒラドレスで歌い踊りながらも、よのなかの動きに睨みをきかせていたのだろうか、「いい予感」を同世代の私に教えてくれたのである。

ところがそれから1年も経たないうちに細川政権は退陣し、あれはいったいなんだったのかということに。

その後も政治改革という名の政界再編は繰り返されるが、政党が乱立してはただ消えていくだけ。そして日本は長い不況の泥沼へと、吸い込まれてゆく。

あの〈政権交代〉はなんだったのか?

依然私たちもバブルの余波に流されて、自分たちの暮らしも仕事のやり方も変えることなく、日々を過ごしていた。