「女子校に通っている間はこの世の楽園というか密林というか、自然体で生きられて精神的にも鍛えられ、人生でこれほど楽しく充実している時はないと思えます」(撮影:藤澤靖子)
女子校出身、と聞いてどんなイメージが浮かびますか? かつて、「キツい」「怖い」「気が利かない」などと評されたこともあったという辛酸なめ子さんは“自戒の念”もこめて、女子校出身者を検証した著書を出しました。あれから10年、先ごろ出版した新刊『女子校礼讃』でふたたび女子校出身者を取材したところ、彼女たちの特徴、傾向が大きく変わってきていることを実感したと言います。発売中の『中央公論』2021年1月号の特集「『女子供』のいない国」から、辛酸なめ子さんのエッセイを配信します

「生きづらそう」というイメージ

約一〇年前に『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)という本を出した時は、女子校出身というと生きづらいというイメージを抱かれることがありました。「女子校出身は素直にかわいいものをかわいいと言えないから生きづらそう」と知人男性に言われたことがあり、外から見るとそんな印象なのかとハッとしました。実際に、私の場合、普通に何かの感想を述べているだけなのに「キツい」「怖い」と言われることが多かったり、料理の取り分けやお酌ができないなど、「気が利かない」と評されたり……。異性に対して自意識過剰になって不自然に対応してしまうこともありました。『女子校育ち』では自戒の念もこめて客観的に女子校出身者について検証させていただきました。

それから月日が経ち、先日出版した『女子校礼讃』(中公新書ラクレ)は、女子校の人気が下がっていると中学受験関係者に言われたこともあって、人気復活に微力ながら尽力したいという思いで取材・執筆しました。実際女子校に通っている間は、この世の楽園というか密林というか、自然体で生きられて精神的にも鍛えられ、人生でこれほど楽しく充実している時はないと思えます。なぜ女子校人気が下がってしまったのか……共学人気に押されたり、大学付属校の需要が高まっているせいもあるかと思いますが、今の女子校出身者は以前よりさらに進化していて、有能で素敵な人が多いということを訴えたいです。

例えば、仕事でお会いした次の日、会話に出たトピックの詳しい雑学をメールで送ってきてくれた女子校出身の広報の方、好きなジャンルについて掘り下げてディープな資料を送ってくれる女性編集者、格式高い場所ではTPOに合わせて上品な雰囲気をまとえる女友達など……。さり気なく気遣いができて、仕事にまじめで謙虚、そんなタイプが多いように思います。謙虚がすぎて、自己評価が低めの女子校出身者も見受けられますが、おそらく女子校時代の級友が優秀だったためコンプレックスを持ったまま大人になってしまったのでしょう。