――出版社もそうでした。女性だから生み出せる企画がある……どんな仕事にもありますね。仕事に打ち込むうち、会社の人たちを家族のように思って会社に尽くす。

「日本の会社はお家だから」

そもそもいまだ多くの家庭で、女性が家事を丸抱えしているという国ですからねえ。

「かといって外資に行けばラクになるかと言えば、そうでもなくて」

ここで外資と呼んでいるのは、海外の金融グループが、日本で証券業務を行うために作った現地法人のこと。法人向けの仲介や富裕層向けサービスが業務の中心だ。

「必要最低限の人間しか雇っていないので、人の休みをカバーすると自分は2倍忙しくなるとか。そういうのは当たり前の話になってくる。ただ、日本の企業からすると自由な雰囲気でしょうかね、外資は。入ったりやめたりが一大イベントではないし。それに年俸制のように、個人に対してお給料が設定されるので、私はお給料が下がっていくという経験をすることなく、変わりゆく会社から逃れることができましたが」

――会社をかわるって、やっぱり大ごとでしたよね。

「あの頃の会社にとって、人がやめるっていうのは受け入れがたいことだったと思うのです。私も1回目のときは『転職します』とはとても言えなくて、少し仕事を休みたいと言って。私よりあとの世代の人たちは、わりと正々堂々とやめていったらしいですけど。ああ、もう時代が違うんだなって。いやだからやめるって、カンタンに決める人が昔より多くなった気がします。なんででしょうねえ? なんていうか、縛りがなくなったのかなぁ」

――たしかに、目に見えない縛りがあった気がします。これってなんの縛りだろう、やっぱり家族……?

「こだわっているのはバブル世代まで? かもしれないですよ」