新型コロナウィルスの感染予防のために初詣を控えようと思っている方も少なくないことだろう。日本人にとっては新たな年の始まりを実感する風習ではあるが、例年と違う状況におかれた今だからこそ、ふだん当たり前と思っていた「しきたり」を見直すにはよい機会かもしれない。日本の「しきたり」に関して著書もある宗教学者の島田裕巳さんは、古くから受け継がれてきたから従うというものではなく、その由来や起源を見極めて、本当に意味のあるしきたりを見出していくべきだという(写真提供:写真AC)

※本稿は、島田裕巳著『神社で拍手を打つな! 日本の「しきたり」のウソ・ホント』(中公新書ラクレ)の一部を、再編集したものです。

神様は参道の中央を通るのか?

最近では、かなり怪しげなしきたりが横行している。

その代表的なものの一つに、神社の参道は、中央は神の通るところなので、参拝者はそれを避けるべきだというものがある。

神社がことさら、そうしたことを強調しているわけではない。だが、神社の参拝の仕方を解説しているような本のなかでは、そうしたことがまことしやかに説かれている。

神が参道の中央を通って社殿にやってくるのだとしたら、もともとはどこにいたのだろうか。あるいは、社殿の修復などで、神を一時的に仮殿などに遷(うつ)し、また、元へ戻すときに参道を通るので、そのように言われるのかもしれない。だが、参道はあくまで参拝者が通るところであり、神が通るものではない。

もし、本当に参道の中央が神のためのもので、人が避けて通るべきものだったとしたら、そこは、人が通れないようにしてあるはずだ。そうでなければ、しきたりを知らない人間に踏みつけられ、穢(けが)されてしまう。実際、神が宿るとされる神体山などは神域とされ、神職でさえ足を踏み入れることができなくなっている古い神社もある。